Weight & Balance

今日は飛行機の話をしたいと思います。もちろん天気に絡めていきますニコ晴れくもり

 

今日は気象の専門的な話はありませんので、気楽に楽しんでいただければと思います。

 

 

みなさん、

 

重量重心管理

 

ってご存じですか?

 

 

英語で書くとWeight & Balanceなので、業界内ではウエバラと呼ばれています飛行機飛行機飛行機

 

私が以前空港で担当していた業務の1つがこのウエバラですニコ

 

ウエバラという業務は、ある意味では計算するだけの簡単なお仕事キョロキョロ

 

しかし、いくつか条件が揃うと、未来を予測しなければならず、時間に追われ、まだかまだかと判断をせかす電話が鳴り響き、失敗すると30分以上も飛行機の出発が遅延してしまう、そんなリスクを隣り合わせの戦場と化します雷えーん雷

 

その条件というのは、カンパニーポリシーに大きく左右されるので運の悪い(良い?)会社でこのお仕事を担当すると、毎日スリリングな重量重心計算を行うことになりますニコ飛行機飛行機飛行機

 

 

重量重心管理(ウエバラ)には大きく分けて2つの要素があります。

 

それは、「重量の計算」「重心位置の計算」です。

 

ハイ、そのまんまですウシシ

 

 

今日は、気象条件に大きく影響を受ける「重量の計算」のお話をしていきたいと思います。

Weight & BalanceWeightの部分ですニコ

 

 

さっきから重量重心の計算と言っていますが、まずはウエバラ業務で何を計算しているのかを説明します。

 

その1つが飛行機最大離陸重量飛行機です。

 

そう、Max take off weight!!

 

 

 飛行機にどれだけの重さのお客様や貨物を積むことができるのか、それは実は日によって異なります。

天気などの外的条件の影響を受けるので、満載で離陸できる日もあれば、少ししか積めない時もあるのですびっくり


ウエバラの仕事では、今日のフライトではどれくらいの重量で飛べるのかというのを、最大離陸重量として算出します。


この最大離陸重量というのは、天気の影響をモロに受けます。

 

つまり、気温が高いとか風が強いとか風向きがどうだとかそんな理由で飛行機の離陸性能が変化するってことですポーン

 

どうですかみなさん?夏休みの国内線で、空席待ちしてやっとの思いで飛行機に乗ったら、中はガラガラで空席が目立つなんて経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうかポーン

 

いや、それはもうウン十年前の話。昔話として聞いたことがある程度でしょうか!?

 

最近の飛行機は、科学技術の進歩のおかげでそこまでシビアな性能低下に見舞われることは少ないですが、やはりものすごい暑い日には飛行機の離陸性能が低下するのです。

 

昔の飛行機では、真夏のフライトの時には離陸性能が低下した分、飛行機の重量を軽くしなければならないので、乗ることのできるお客様の数を減らす真顔

 

その結果、座席は余っているのに、お客様に乗っていただくことができない滝汗

 

という現象が時折発生してしまったそうです。

 

 

これは聞いた話なのですが、

 

座席が50席ある飛行機で、気温が高すぎるために最大座席数を40席に制限した結果、予約が溢れて空席待ち状態、という出来事も数十年前にはよくあって、

(座席数に関しては正確に覚えていませんが…)

 

その結果、やっとの思いで空席を勝ち取ったお客様は、機内に入って空席だらけの状況を目の当たりにするポーンオイコラナンデヤねん状態ですよねニヤニヤ

 

客室乗務員の皆さんが、お怒りになったお客様に必死に状況を説明するえーん

 

なんて光景も夏の風物詩だったとか、ではなかったとか。。。

 

しかし、この記事を読んで重量重心管理の知識を身に着けたあなたは、そんな事態に見舞われても何も驚くことはありません。

あ~気温が高いんだな晴れと合点がいくことでしょうニコ

 

いや、現代の飛行機では起こらないかグラサン

 

で、やっと本題に入りますが、重量重心管理業務を行っていると、本当に天気に振り回されて大変なのです。

 

最大離陸重量を計算する上で、天気がどのように影響するのかを以下に列挙します。

 

気温高い→離陸性能低下

気温低い→離陸性能向上

向い風強い→離陸性能向上

追い風強い→離陸性能低下

 

主にこんな感じです。

 

 

「気温」「風向・風速」主にこの2つのファクターが飛行機の離陸性能を大きく変化させます飛行機飛行機飛行機DASH!

 

離陸性能が低下すると、最大離陸重量が少なくなります。

 

 

これらの変化によって影響を受ける最大離陸重量を算出するのが、ウエバラの仕事なのですニコ

 

 

みなさん、ここでよく考えてみてください。

 

気温って時々刻々と変化しませんか?

風の強さや、風向きって時々刻々と変化しませんか?

 

しますよね滝汗

毎日、毎時間、毎分、毎秒変化してるじゃないですかぁ

 

これがあるから怖いのです。。

 

 

私が担当していたフライトには日本からアメリカ大陸に飛ぶ長距離路線がありましたニコ

 

長距離飛ぶということは、燃料満載で離陸するということです。

 

そうです。重いのです飛行機

 

つまり、最大離陸重量ギリギリになりやすいということです。

 

そんな中、時々刻々と変化する気温や風向・風速を確認しながら、最大離陸重量を算出します。

 

ちょっと気温が上がると、、ちょっと向い風が弱まると(追い風が強まると)、、離陸性能が低下し、最大離陸重量が下がってしまいますびっくり

 

 

そんなこんなで天気図や気象情報とにらめっこしながら、その日の最大離陸重量を算出したら、ギリギリまで少しでも多くの乗客や貨物を乗せます。

 

そう、一人でも多くの乗客、一つでも多くの貨物を載せて飛びたいのですニコ

 

でも最大離陸重量を超えることはできません。

 

もし最大離陸重量にひかっかる場合は、貨物を降ろしたり、場合によってはお客様に降りていただかなければなりません。

 

でもなるべく多くの乗客、貨物を載せて飛ばしたいので、ギリギリを攻めます。

 

これが大変なのです。

 

さて、

我々がいつ最大離陸重量を決定し、その日の最大座席数や最大貨物量を決定していたのかというと、

 

出発の約1時間前ですグラサン

(エアラインのポリシーによります)

 

 

そして、定刻に出発したとして、飛行機が駐機場(ターミナル)を離れて滑走路を離陸するまでに更に15分後前後かかります飛行機DASH!

 

 

もうお気づきになりましたか?

 

ウエバラ担当者は、離陸する1時間以上前にそのフライトの最大離陸重量を決定しなければならないのです。

 

でも1時間後の天気がどうなっているのかなんてわかりません。

 

でも、出発の1時間前に決めなければなりません。

決めないと、お客様の搭乗可否の判断も、貨物の搭載可否の判断もできませんから当然と言えば当然です。

 

でも、未来の気温も風向・風速も誰にも分りません滝汗

 

でも1時間前に決めないと…

 

そして出発の1時間前が近づくとチェックインカウンターからの電話が鳴りやみません。

 

プルルルル… 「も、、もしもし…」

「すみません今日は何人乗れますか?」「空席待ちのお客様乗れますか?」「あと何人乗せていいですか?」「いつ決めてくれますか?」「お客様待たせてるんですけど、もう乗せていいですよね?」

 

あぁ、、、胃がキリキリする、、という毎日笑い泣き

 

 

天気予報なんてあてになりません。

気温が1度、風向が10度、風速が1メートル変化しただけで最大離陸重量は変化します。

 

 

予言の書なんてものが存在しないこの現代社会において、頼れるものは長年の経験と勘しかありません。ということは、頼れるものなど何もありません滝汗

 

 

もし、自分が算出した最大離陸重量が重すぎて、1時間後に離陸できません笑い泣きなんてことになると大変です。

 

「オフロード」といって、いったん飛行機に載せた貨物を降ろしたり、場合によってはお客様に飛行機から降りていただくことも無きにしも非ずです。

 

off load!!

これはウエバラ担当者を恐怖に陥れる魔界の言葉なのです真顔

 

 

オフロード作業を行うと間違いなく30分以上の遅延になります。

 

プロとしても悔しいですし、それ以上に企業として大損害です。

お客様になんと説明すればよいのか…絶望

 

 

現場を離れしばらく経った今となっては、どんな魔術を使って1時間も前に最大離陸重量を決定していたのかよくわかりませんが、

 

日々、オフロードの恐怖と闘いながらスリル満点のウエバラ業務を行ってたことは未来永劫忘れません爆  笑ドンッ

 

胃がキリキリはつらかったですが、ウエバラ業務は突き詰めるとアカデミックだし、やはり非常にやりがいがあって面白い仕事だったなと思いますニコ

 

 

というわけで、皆様、夏休みの飛行機はみんなの笑顔を守るため、悪条件の中必死に頑張っているんだ飛行機飛行機飛行機びっくりマーク

 

ということを胸に刻んで飛行機をねぎらってやっていただけると、ウエバラ担当者も報われます。

 

 

 

ニコ今回は、気象条件が飛行機の離陸性能に与える影響がなぜ起きるのかという専門的な話はしませんでしたが、もし興味のある方がいらっしゃれば、ちょっと物理の話も交えてウエバラや航空工学の話もしてみたいと思いますビックリマーク