2023年公開 「花腐し」
<注意>本作はR18ですので、観る人をかなり選ぶかと思います。
あらすじ
ある梅雨の日、廃れていくピンク映画業界で監督を務める栩谷(綾野剛)と脚本家志望の伊関(柄本佑)が出会う。会話を重ねる中で徐々に打ち解けた彼らは、過去に心から愛した女性について語り始める。しかし、それぞれ語っていたのは同じ女性、女優の桐岡祥子(さとうほなみ)だったと気づき…
監督脚本が荒井晴彦。
元日活ロマンポルノ系の監督なので、平成以降も関わった作品はほぼ男女の性を描いた作品が中心です。
この映画を何故観ようと思ったのか、それは綾野剛が主演と言うのも大きかったのですが、何よりモノクロの映像とカラーの映像のコントラスト、そして雨の中のシーンに物凄く惹かれたからです。
酒とタバコをやりながら1人の女、その女とのセックスを永遠語るなんてないことですよ。
逆にどれだけ一途な男たちなんだろうと思います。
しかも、お互い気づかず同じ女性を語っていたなんてロマンティックなことを…
現代がモノクロ、過去がカラーなんです。
2人が語るヒロインは亡くなってますから、現代すでにこの世にいない希望もない世界観としてモノクロなのかなと思います。
なるべくアダルトな内容は伏せますが、祥子にとったら伊関が最初の男、栩谷が最後の男でした。
伊関で性を覚え、栩谷と関係を持つ頃には慣れたものです…笑
ただ、栩谷に関しては、祥子はピンク映画監督と自殺しているのを発見された経緯があるので最後の男と呼んで良いものか…
これが結構残酷で、最初の男だった伊関は結婚も良いよねと言うタイプだったけど、女優としてキャリアを積みたかった祥子はまるで興味なし。
栩谷との同棲で妊娠が発覚した祥子は結婚したがりますが、栩谷は子供なんていらないし結婚する気もないと言い放ちます。
タイミングって難しいですね。栩谷に関してはそれはダメだろ!ってなります。祥子が可哀想でした。
とにかく、アダルトなシーンが多いので語れることが少なくなりますが、個人的に残念だったのが、終盤がカオス状態だったことですかね。
さとうほなみがかなり身体張って頑張っていたので、プロの方出さなくても…
個人的には文芸映画にヒビが入った瞬間でした。
あれは間が持ちません…
これが男性監督目線なんでしょうね。
そして時代感を出すために使われる台詞が政治の事だったりしてやたら気になってしまいましたね。
ちょっと強調が強くて政治思想が見えてしまったりもします。
意外だったのが、近年、性を扱う作品でよく見かけるインティマシーコーディネーターをつけたと言う事。そこはしっかりやっていたんだなと思いました。
肝心の綾野剛ですが、この映画は「カラオケ行こ」とほぼ変わらない時期に上映していましたが
なんと本作でも歌声が聴けちゃいます。
途中、祥子がスナックで「さよならの向う側」を歌うシーンがあるのですが、エンドロールがまたその歌声なんですね。ずっと聴いているとなんと栩谷が歌い始めます。綾野剛の歌声が聴ける大サービスがあります。
ここはちょっと感動しましたね。
終盤のシーンで胸焼け状態だったものがエンドロールでかなり余韻残されるんです。不思議な映画。
R18は殆どの確率で人に勧められません。
ですが、出ている俳優が普通の人気俳優ですし、R18に興味があってチャレンジしたい方は思い切ってみるのも良いかもしれません。
少なくとも、松坂桃李の「娼年」、池松壮亮&門脇麦の「愛の渦」よりはストーリーに集中出来ると個人的には思います。