空の巣症候群というものがある。

子どもが巣立った後、空っぽになった巣で、燃え尽きたみたいになってしまうことらしい。

 

去年は私も空の巣症候群だった。

今では回復したが、かなりきつい経験ではあった。

夫にも多分心配をかけたし、すごく助けてもらった。

子どもの中学受験が終わり、ほっとしたのと、思春期が始まったことのダブルパンチで、メンタルの落ち込みがひどくて、おかしかったと思う。

でも、人間落ち込んだら、それをなんとかするためにジタバタして、そのジタバタが、新たな甦りをもたらしてくれるから、無駄じゃないというか、必然というか、今ではあれがあってよかった、しみじみ。という気持ち。

もちろん、去年の私はボロボロだったけど。

そう考えると、私も、昔に比べて、ものすごくレジリエンスが高まっていると思う。

 

中学受験は、一心同体みたいな感じでやっていたので、中学に入学してから子どもとの距離感が変わって、距離を取られて部屋にも入れてくれなくなり、部屋に入ると“すがりついてこないで!!!“と、ブチギレられて、その惨めなことよ。“すがりついてこないで“っていうセリフ、なかなか聞かないですよね?貫一お宮みたいだな、とか、月明かりの松の前でこう、蹴られてる感じ。

 

こんな話ね、他人から聞いたら、“あー、なんて子離れできてないお母さんなんだろ、そんなの当たり前でしょ。“と思う。

それなのに、いざ自分がそういう立場になると、がびーんってショック受けるし(なんか年代ばれそうな言葉を使ってるけど)、ものすごく寂しいし、もう私の存在なんて無価値なんだ。というどうしようもない気持ちに落ち込む。

それまで、選択の余地なく、お母さん、という立場にはまりこんでいたから、仕方ない。

元々、誰かのお世話好きなわけでも、子ども好きなわけでもなかったのに、いざ生まれてみたら、動物の本能みたいなものが出てきて、必死に真面目にお世話してきた。

動物の母親が気がたっているけど、私もそんな感じで、本来の自分と違うアプリが起動して、そっちの役割にハマってやってきた。

それがある日突然、用無し、みたいな、そんな気分。

だから、もちろん、“用無しも何も、当たり前でしょ?子どもは自立していくんだし、逆にいつまでもべったりだったら、怖いでしょ?“というツッコミを入れる自分もいるのだが、それでも落ち込んで、もう自分なんて後は死ぬだけだ、という絶望的な気分に陥った。

 

夫には感謝しかない。

落ち込んだら話を聞いてくれて、これからは二人で出かけよう、と言って、美術館や山によく行った。

どこに行っても、小さい頃は一緒に来てたのに、とかもう過去の懐かしい光景しか浮かんでこないんだけど、そのたびに、“よく見てみ、周りにいる子どもみんな小学生以下でしょ?中学生以上は親と行動なんかしないよ?“と、声をかけてくれて、私も徐々に納得していった。

小さい子を連れた家族を見るたびに、失った時間を想って涙が出るし、もう人間も動物なんだから、子どもが巣立ったら後は死ぬだけだよな、とか産卵後の鮭のイメージが浮かんできたり、平安時代だったら、もう私の歳で寿命って感じで、ちょうどよくできてたんだ、私これからどう生きてったらいいの、みたいな。

 

そうやって、とことん落ち込んでたら、ある時、“こんなんで死ぬなんて嫌だ!私はこんなんで終わりたくない!“という欲求が突如湧いてきた。

その時に浮かんだのは、“不死鳥“のイメージ。

火の中からまた生まれてくるという、あの手塚治虫の“火の鳥“のイメージです。

寿命がくると火に飛び込んで、またそこから新たに生まれてくるんじゃなかったでしょうか?

こんなんで終わってたまるかぁ〜!!

ていうね、私の命の叫び…、なのか、なんなのか、とにかくそういう気分が猛然と湧いてきた。

 

あまりに落ち込みがひどくて、更年期かなと思い行った婦人科で処方された、“加味帰脾湯“が良く効いたのかもしれない。

 

とにかく、ここで私は“女性性の解放“に走った。女性性の解放、というのは、これまでも何度かステップを踏んでいたのだが、多分ここにきて、最終段階的なものに到達した気がする。

 

いくつか参考書があるが、私が非常に感謝しているものが以下の通り。

 

ちつの取説、劣化はとまる 原田純、たつのゆりこ

潤うからだ 森田敦子

 

原田さんには感謝しかない。

ここまであけっぴろげに語ってくれる先輩がいるというのは、心強い。それに、女性が自分の体について、語ったり、探究したりしにくい空気をぶち壊してくれた。

森田さんの著書は、とにかくわかりやすい。さらに、こういうケアがあったのか〜、と目から鱗。

 

さらに、上記の本に書かれている“ケア“をするプロセスでは、体というより、感情的な蓄積が解放されたように感じる。なので、もちろん認識していなかった抵抗感もすごく出て、気分が悪くなることもあった。

 

そして、もう一冊、忘れちゃいけないのが、こちら。

 

幸せなセックスの見つけ方:自分をまるごと好きになる「ひとり宇宙」レッスン 剣持奈央

 

こちらの本は、出版された当時に買って、それからも折に触れて読んでいる。

出版された当時と今では、フェミニティをめぐる状況が大きく変わっているけれど、当時はこういうことを語ってくれていることにすごく救われた。

彼女の感覚的、直感的な真実は、とても共感できる。

それに、体から心へのアプローチは、ただ心だけ扱うより、ずっと大きな効果が得られる気がする。

この本があったので、今回、そこまで抵抗感が出なかったような気がする。

ただ、女性性の抑圧が強い人は、突然全部やろうとすると、かなり抵抗感が出るかもしれない。