村上春樹 「騎士団長殺し」 PART3 | 七転び八転び!? 15分で1冊 

七転び八転び!? 15分で1冊 

人生、いいことの方が少ない。

「薬害エイズ訴訟」の体験とそれまでの過程、読書の感想と要約をを綴ります。

12、
午後1時ピタリに免色が家に来ていつものようにデッサンを始めた。
予定の作業が終わり雑談に入ったところで私は思い切って鈴の音の話をしたが免色は非常に興味を示す。
そして免色が夜中の12時半に家に来ると言うので私は承諾した。

13、
免色が約束通り夜に家に来た。
まだ時間があったのだが免色が私に子供がいるのか聞いてきた。
私は6年結婚し自分はどちらでもよかったが妻が望まなかったと答える。
そしてなぜそのようなことを聞くのか聞いてみる。
すると免色は結婚歴も無くまた家庭も子供も望んでいなかったが数年前から実は自分に子供がいるのではと思うようになったという。
初めて他人に話すのだがと前置きをして、15年ほど前ある女性と交際していたという。
20代後半の魅力的な女性だったが自分の性格上結婚する気は無いとあらかじめ伝えていた。
そのことを彼女も理解してくれていたがあるとき彼女が普通の男性と結婚することになった。
あるとき彼女から職場に行ってもいいかというので了承し仕事が終わり従業員が帰宅し職場に免色一人いるところに彼女がやってきた。
そして彼女は特に話すことは無いと言ってソファーに座っていた免色の上にまたがり自分から積極的に性行為をした。
免色を驚かせたのは普段の彼女は抵抗を感じるほど性行為に関して受け身だったからだ。
行為が終わると彼女はさっさと着替え振り返ることのせず部屋を出た。
それが彼女にあった最後の日でそれから一切の音信が途絶えた。
そして2か月後彼女は結婚したがそれは共通の知人から聞いた話だったし相手の男は全く知らない人だった。
そして彼女は挙式後7か月後に女児を出産したというがそれもずっと後になって人から聞いた話だった。
その女の子は免色の子供ではないのかという。

 

私が彼女に確認してみればというと実は7年前にスズメバチに刺され亡くなったという。
その娘は13歳になっているというので私は妹が死んだ年と同じだと思った。
そして免色は実は彼女の死後しばらくして彼女から手紙を受け取ったという。
それは弁護士に彼女がもし死んだら免色に送るようにあらかじめ指示していたものだった。
内容は、あのように突然姿を消したことを悪く思っていること、でもああするしかなかったこと、あの晩の行為は意図的であり後悔していないこと、などが書いてあった。
そして免色は女児を調査させたという。
それによると彼女の夫は15歳年上の不動産会社の経営者で娘の名前は「まりえ」という。
だが免色は彼女とまだ顔を見たことが無いという。

14、
しばらくの沈黙のあと免色が音のするところに行こうと言い出す。
例の場所に行くと免色がこの石の下で誰かが鈴を鳴らしているように聞こえるという。
迷っていた私に免色が今日は行ったん家に戻りましょうという。
二人は家に戻ったが断続的に鈴の音は聞こえてきた。
私は警察に届けるべきかと言うとそれより知り合いの造園業者に頼みましょうという。
翌朝雨田に造園業者に依頼する許可を得る。
そして免色から造園業者の手配が取れたという連絡が来た。

15、
造園業者が家に入り石を一つ一つ取り除いた。
そしてある程度作業を終えた造園業者が石の下に空間があるようだと言う。
そして木製の大きな蓋を取り除くと横・深さ2メートルほどの空間があった。
そこには鈴というより木製のシンバルを重ねたような楽器があった。
手に取り鳴らしてみるとやはり例の音に間違えなかった。
空洞の中は何も無くなぜ閉じ込められていた鈴が鳴るのか理解できなかった。
家に帰ると鈴はスタジオに置いたが免色はこれはただの始まりに過ぎないのではというがそれは正しいことが後で分かった。

16、
翌日夕方に免色から電話があり昨晩は鈴は聞こえなかったことを伝えた。
すると明日の11時に伺いたいと言うので了承する。
その後すぐにガールフレンドから電話が来て会いたいと言うので明後日会うことになったが今車の中から電話しているが彼女の誘導でテレフォンセックスをする。

 

17、
私が家を出て行くとき妻が「もし別れても友達でいてくれる?」と言われたことが忘れられなかった。
予想外の言葉に曖昧な返事しかできなかったがそんなことはできないと思っていた。
結局元妻からは連絡が来ることは無かった。

私はスタジオに入り書きかけの絵を見ていた。
喉が渇いたので一旦退出し戻ったらスタジオには誰もいないはずなのにスチールが移動していることに気付く。
不思議に思っていたら誰かの声で「かんたんなことじゃないか」というのがはっきり聞こえた。
空耳かと思ったらまた「わかりきったことじゃないか」と誰かが言ったのが聞こえた。
しばらくポートレートの前でじっと見ていたが一体誰がスチールを動かしたのか考えたがきっと自分が無意識に動かしたのだろうと結論した。
しかしそれは真実ではなかった。

 

18、
約束の時間に来た免色はあの鈴をもって石室の中に入りたいと言うので付き合う。
そして免色が言うには中に入るので一度蓋をしてほしいと言う。
私は家に戻り待っていたが1時間たっても連絡が無いので心配になり石室に行き声をかける。
免色は気付きこれ以上は危険だと言うので出ると言う。

二人は家に戻ると私は免色に実は絵はもう完成していると伝えると免色は喜ぶ。
しかし私は上手く説明できない何かで納得いっていないと言うと免色は見せてくれというのでみせるがそれを見た免色は出来栄えにとても喜ぶ。
そして免色は完成祝いを二人でしたいということで私を招待した。