尾崎紅葉 「三人妻」 第7篇 | 七転び八転び!? 15分で1冊 

七転び八転び!? 15分で1冊 

人生、いいことの方が少ない。

「薬害エイズ訴訟」の体験とそれまでの過程、読書の感想と要約をを綴ります。

お艶は昨晩の件は紙に墨を塗られたのと同じ。
紙を引き裂く暇も無く馬場へ手紙で訴えるも葛城様の世話になることは勧めないと。
お艶は易を見てもらうと言い凶が出たマズいと思い夫婦は反対したが結局女房が一緒に行くことに。
見てもらうと初めは忌み嫌うことがあってもその人は客心はなく和解すると吉、と出た。
まるで女房が先回りしたかのように良すぎて快くない。
お艶はまだ決めかねているが轟夫婦は6割方抑え込めたとみて余五郎に報告したが泣き伏せても納得させろと命令される。

客になり桜が咲く。
人の心も目隠しから日向に出て酔ってもいないのに面白く感じ不必要な金を持っているとついまき散らしたくなる日和。
人の無分別なことを起こすのもこの頃だ。
余五郎は狙った女はことごとく手に入れ今は銭儲け以外、欲はなく何か面白いことはないかと考えているがそもそも快楽は不自由の中から少しばかり自由に行うことである。
そこで一年くらい家来をしてみたいと言いだす。
天地も華やぐこの季節に銭勘定ばかりしているので朧月が大きな銀貨に見えてきた。
酒も身に染みない。
格別の知恵も無いので妻の麻子を呼び何か面白いことはないかと洒落半分に聞いてみる。
先ごろ手に入れた音羽の別荘は広く桜の木も多数あり今は見頃と聞いているので花見を兼ねて妾三人を同時に呼び顔合わせさせてはという。
余五郎もその気になりどうせなら茶店を出したり内輪の者も100人くらい呼んで楽しもうと言い出す。
三人に何か趣向を凝らしたものを出すように注文した。
お艶は焦るどころか匙を投げたと拗ねる。
お才は柳橋の喜佐太夫という男芸者を軍師として頼めば白夜訓練する。
お角も色々指導役を探すもいいのが見つからず出入、小間物屋の老人で歯は抜けながらも美音、その人に頼むとそんなことなら身銭を削ってでも教えるという好きもの、お角の家に入り浸り息子が迎えに来るほど夢中になる。

当日は130人ほど招かれるが綺麗な着物を着たあの美人は誰だと客の間でうわさになった。
その女は才蔵だった。
才蔵の店は人で一杯になる。
また一際目立っている店は紅梅のもの。
本人は女将門のような姿で飛び切りの艶顔をしている。
22、3歳と聞いているが18、9歳の中にいても違和感も無くまた威厳があっても猛からず愛嬌があっても媚びない。
これが地なのかと思わせる品の良さ彼女のお腕に隠れるのならこの一年は縁起がいいと思わせる。
一方お艶の店はどこだと探してみると庭の奥に古びた茶室がありそこに6、7人の客の前で静かに茶をたてていたのがお艶だった。
お艶は変わったことをしても仕方がないと思っていたが女性客が増えて忙しくなり酔い覚ましにと男が沢山来て誠に賑やかになる。
余五郎夫婦は目立たぬ服装でまずお才の売店、紅梅の幕の内、お艶の茶事を周りいずれも気に入り夜になり月も出たところで寮の2階に席を設けて3人を上げる。
お才の意気、紅梅の品、お艶の寂、そして庭の桜も併せて妻のお麻は自分は掃きだめの側に立つつもりはない。
店の夜の酔い覚めにと外へみんなを連れ出す。
余五郎は眠くなったと言って2階へ戻りみんなで雑魚寝だという。
しかし何かせねば気が済まないようで花かるたを取り出す。
お麻は余五郎の仲間との賭けカルタに参加したこともあったのでやる気を出しお才も下手の横好きで待合室でやったことを思い出しやる気満々。
紅梅は雪村の別荘で仲間としたが賭けはしないと断ったが洒落だと言われ席につく。
麻子もお艶もと誘うが不器用でルールを覚えられないのでここで拝見しても良いかというが身分ある女の遊びはこんなところでするのかと内心驚き田舎者を恥じていた。
4人で勝負をするが余五郎夫婦が負ければ金銭を、二人が負ければ裸踊りをと言い出す。
紅梅は反対したが結局始まりその後お才が大負けし勘弁をと願い出たが余五郎夫婦は許さなかったので仕方なく脱ぎ始めたのでお艶は目をそむけた。

麻子は今日の花見を機会にこれからみんな仲良くやりましょうと言って別れる。
帰りの馬車の中でお麻は大抵の男はあの三人に殺されてしまう。
女の目から見て紅梅はおっとりしていて賢く情も相応に深い。
お才は任侠にして強く男に我儘をして遊ばせるには面白い。
お艶は無垢な生娘、優しくて実あることが取り柄。
銘々の役割を言えばお才は酒の酌、紅梅は床の口説、お艶は茶の給仕と言うと二人でどっと笑う。
そして本命は誰かと聞けばしばらく考えて含み笑いをしてお才は確かなところが無くて物足りない、お艶は底にしっとりしているものがありながら素っ気ない、と言う。
それでは紅梅かと聞けば、そうかもしれない、昔ならお家騒動になりかねない曲者だと、お麻は笑う。

紅梅は二人より先にお麻の機嫌伺いに行く。
如才が無い女と思いつつも来れば相手をし嫌な顔もせずしまいには余五郎に褒めたりする。
しかし用もないのに繁々と通うのも嫌なので月2回よりは行かない。
そうなると情も湧き、日ごろ人の意見を聞かないお麻も着物の目立てには紅梅の意見を聞き入れた。
お才、お艶も2か月に1度顔を出すが紅梅に比べればご無沙汰感はある。
お艶は意地であり、お才は浮気で、紅梅は心の底から惚れた感があった。
地ではあるが天性の男殺しで格別の巧みに言い出す言葉に情を含んでおりまた艶めかしいわけでもなくとても商売としての玄人ができる技ではない、樹に咲く花とガラス細工の作り花の違いくらいあった。
お才は元々余五郎が好きではなかったし疎まれても苦ではない。
最近余五郎が来ないのも仕方がないと思いもしや風邪かもと出向いてみると余五郎は不在。
そしてお店の前で紅梅が琴を弾きお才が来たのを知っていても手を止めないで悠々と弾きツンとしている。
あまりにも紅梅にこのような仕打ちに腹を立てるもお麻の前で我慢していたがこのままでは紅梅に食って掛かりそうで席を立ち紅梅を睨み付ける。
お才は今日の様子ではお麻は相当紅梅に刷り込まれたとみる。
この程度でべそをかき引っ込んでいる女ではない。
近いうちにきっと仕返ししてやるとで会う機会を伺っていたが中々その機会が無い。
このままではいけないとお才は余五郎に紅梅の悪さを手紙に書く。
送り先はいつもいるであろう紅梅のところに送るが偶然金五郎が不在で紅梅が手紙を開封し読んでしまう。
そして手紙を基に戻し余五郎が来たときに見せた。
読んでみた余五郎はお才も馬鹿なことをするな、読んでみろというので白々しく読む。
紅梅はお艶にも本妻のところにも顔を出してほしい、まるで私的独占されているように思われるのも苦しい、と書いてあった。
紅梅はお才に手出しをすれば相手の思うつぼなので黙ることにした。
お才は紅梅から例の返事も無いので益々イラつき始めとうとう長い手紙を書き紅梅に送りつける。
受け取った紅梅は驚くより呆れる。
お才は今度こそはと思いながらもまた返事が来ないのかと待つことにした。
紅梅は麻子のところに駆けつけ悔しいことがあると言って手紙を見せる。
そしてお才に恨みを言うが麻子も頷いて聞く。
麻子もこの様な無作法なことに相手にしない方がいい、ここは我慢して我に任せよ、と言う。
お才様より経験不足故に意気地なしの私は奥様に従い何でも辛抱することを泣きながら言う。
不束者の私だが見捨てないようにお願いした。

閑になったお才は三味線を弾いても冴えず以前少しした茶事を匠を呼んでやってみたけれどうまくたてられない。
お金はあるけれど暇な身になってみれば古巣も思い出される。
柳橋に会いに行きたくても余五郎に禁止されているので行けない。
そこで同じヒマのお艶を誘うことにする。
お艶は大人しく別に何も無い女だが心に毒を持っていないのが何よりととにかく誘うがお艶は大喜びして会うことになる。
歌舞伎を一緒に観に行くが二人とも着飾った服やアクセサリーをお金に換えればこの劇場がもう一つ
蛙のではというほど。
観客の中にもこんな綺麗な人はいない、華族の人ではないかと思われるほど観客も役者までもが見つめる。