・読み終わった日:2010年5月21日
・人物:「私」(作者)
・ストーリー:
「私」は死ぬ前に東京八景を書き残したいと思うようになったので伊豆に行って書こうとする。
「私」は昔住んでいた場所を思い出すため東京の地図を広げる。
戸塚に住んでいた頃大学の仏文科に在籍していたが仏文には全く興味がなく勉強もしなかった。
すぐ上の兄が近所で彫刻の勉強をしていたが病死してしまう。
その後「私」は左翼活動をするがその頃、田舎からHが上京する。
Hは地元の芸妓で「私」は彼女と3年間付き合っていた。
そして東京へ来たがそのことで長兄が「私」に会いに上京してくる。
長兄は泣きながら「私」を説得し、Hは将来結婚するということを約束を取り付け長兄と一緒に帰る。
「私」は実家に帰ったHから全然私に手紙が来ないことと自分の左翼活動の能力のなさに失望した。
そして「私」は銀座の女給に引っかかり彼女と鎌倉で入水自殺を図るが「私」だけ救出される。
自殺の原因はHのことで母、兄、叔母に呆れられてしまったことだった。
兄は約束を守りHを東京に連れて来る。
Hは「私」に自殺未遂があったのに何も感じていないようだった。
その後二人は一緒に住んだが「私」は相変らず学校に行かず左翼活動で2度捕まる。
しかしHはそのことも何も思っていない様子だった。
ある日学校である学生からHの噂を聞く。
「私」はその日にHに噂を問い詰めると本当だった。
それを聞いた「私」はHを憎むどころか可愛いと思うようになる。
「私」は遺書となるような小説を書くことを決意するがなかなか小説が書けず悩む。
もう卒業しなければならない年齢になっていたが卒業する気などなかった。
それに小説を完成させるための時間稼ぎをしたかった。
そして実家からの仕送りが欲しいため今年こそは卒業するとウソを言い続け、Hにもウソを言いい続けた。
何とか20編書いて6編を焼いたがHは何故焼いたのかと泣いた。
それからはHと顔を合わせるのが嫌になり毎晩飲み歩いた。
不眠症になりそしてHに卒業するとウソをつき一方では死ぬことを考えていた。
そこで一人で鎌倉に行き首吊り自殺を図るが失敗に終わる。
「私」は家に帰ると長兄が上京しておりHが私の背中をなでた。
その数日後「私」は盲腸炎を起こし長期入院になり薬物中毒になる。
退院後はカネを借りまくり飲み歩く。
その後「私」の小説が発表されるが賛否が渦巻く。
その後「私」はある病院に入院させられ1ヵ月後退院しHと二人で家に帰る。
車の中での二人の雰囲気は悪かった。
家に帰っても「私」は何をしていいのか分からず酒を飲んでいた。
生活は荒んでいきHと二人で水上温泉に行き心中を図るが二人とも失敗する。
今度の自殺の原因は「私」が入院中Hが「私」と親しい洋画家と関係を持ったことだ。
その後Hと別れる。
「私」は自分自身に白痴、ニセ天才の詐欺師と毒づく。
それから長兄が代議士に当選したが選挙法違反などで起訴され、その後姉、甥、従兄弟が死ぬ。「私」は既に親戚から見放されていたのでその件を知ったのは外部からの伝聞だったが逆に「私」は生きようと思うようになる。
「私」は実家の大きさにはにかみ、金持ちというハンディ、不当に恵まれている恐怖感が「私」を卑屈にし厭戦させていたと感じる。
そして金持ちは地獄に落ちなければいけないと思うようになる。
30歳になり始めて本気で文学生活を志した。
そしてHとの心中事件を題材に小説を書いた。
その後唯一私を見放さなかった先輩作家の紹介で見合い結婚をし武蔵野に引っ越す。
ある日「私」は妻の妹から夫のTが出征するというのを聞かされ見送りに行く。
「私」はTに「あとは任せろ」と「私」らしくなく偉そうに言う。
・感想:
ああ、そう、という感じ。
大体小説のタイトルとは中身が違う気がするが。
太宰研究者にはいい資料ではないか。
小説としては面白くない。
好みの問題だろうが「女々しい」のは読後感が悪い。
これだけ自堕落な生活をしながら小説を書けるのだから才能はあるのだろうが。
逆に自堕落に退廃的に生きると才能が活発に動く人なのかも。