最近ジムに通っています。

「健康のため」という極めて三十路的な理由からはじめたものの、
昨年10月からサボらずに通い続けているというこの事実は、
全国の算数ドリルを続けられない小学生達の前で
ドヤ顔で胸張りをしても差し支えないレベルだと自負しています。

そんなジムですが、よんどころない理由により、
閉館前に行くケースがどうしても多く、
帰り時間は閉館ギリギリ、もしくはちょい超えなケースもしばしばあります。(すんません)

その時現れるのが、彼。
そうです。ゴーホームオヤジです。(ジムの職員の方。以降、GHオヤジと記載)
閉館時間10分前ぐらいになると、男子更衣室の空気が不気味にゆらりと揺れ、
その直後、耳をつんざく怒号が、直前まで平和ないち更衣室だった場所に轟きます。


「閉館まであと10分です!!早く帰って下さい!!」


しかもこれを30秒に1回ぐらい延々と繰り返します。
僕が通っているジムは全国に複数店舗がある大手のジムなのですが、
どこの店舗に言っても、こんな歯に衣着せぬ物言いをする方はいません。
大抵どこの店舗でも


「まもなく閉館時間となります。お忘れ物の無いようお気をつけてお帰り下さい」


上記のような、サービス業であることを放棄しない、
歯に物の詰まった依頼の仕方をするケースを見ることがほとんどです。

並べてみても、やはりその違いは歴然です。


GHオヤジ:「閉館まであと10分です!!早く帰って下さい!!」

一般的 :「まもなく閉館時間となります。お忘れ物の無いようお気をつけてお帰り下さい」


しかし、GHオヤジがいる店舗といない店舗、
また、GHオヤジがいる店舗でも彼が出勤している日としていない日の
お客さんの帰宅率は、目で見てわかるほど明確に異なります。

怒号が鳴り響いた瞬間からの、お客さん達のBダッシュ具合。
推定年齢47歳の彼は、いつも般若のお面をつけずとも、
それと相違ないフェイスをして、ちんたら残ったお客さんを震え上がらせ、走らせています。

彼の出している成果は極めて大きいです。

そして、大変お恥ずかしながら、僕もそんなBダッシュ仲間の一人ではあるので、
いつもGHオヤジさんに不必要に声を張らせてしまって申し訳なく思っていました。

僕のせいでいつも声を出させている。
僕のせいでホントは温和なのに般若面をさせてしまっている。
僕のせいで。。。

なので、その日は勇気を出して伝えることにしました。


般若面で怒号を連呼しているGHオヤジさんの横を通る時、
胸の前でぎゅっと手を強く結んだあと、勇気を出して、そっと伝えました。





「いつもありがとうございます。今日もお疲れ様です」




するとどうでしょう、驚くべき言葉が返って来ました。




「こちらこそありがとうございます。またよろしくお願いします」




もう1年近くジムに通っていますが、こんな言葉、こんな声を聞いたのは今日が初めてです。


やっぱりオヤジさんは般若じゃなかった。
やっぱりオヤジさんは心の優しい純粋な人だった。
やっぱりオヤジさんはプロとして仕事に全力で取り組んでいる職人だった。


それがわかった瞬間でした。

僕は本当に嬉しい気持ちになり、ジム帰りの疲れた体ながら、
信号待ちをしているお婆さんがいればおんぶをして渡ってあげ、
荷物が重くて階段が上れない妊婦さんがいれば、代わりに持って上ってあげ、
席に座って困っているおじいさんがいれば、進んで席を譲ってあげ、
るつもりで家路につきました。

その後、いつもと変わらず、オヤジさんは般若面で怒号を浴びせ続けますが、
挨拶を続ける僕が横をすれ違う瞬間だけは、ふっと、目が優しくなるのを知っています。



GHオヤジ、フォーエバー。