〈あらすじ〉
大物浦の船問屋・渡海屋では、都を落ち延び
九州へ向かう途中の源義経一行が船出を待っています。
実はこの渡海屋の主人銀平は、
義経を狙う平家の武将・平知盛。
知盛は船を出し、
海上で義経たちを討とうと企みますが…。
〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉
「渡海屋」で、
平家の身分を隠して生きる平知盛たち。
知盛は船宿の亭主、
幼い安徳帝は、娘お安、
乳母、典侍局は妻として⋅⋅⋅
源氏追討の機会が訪れ、
元の姿に立ち返る様子は感動的です。
仁左衛門丈の知盛は、颯爽と華やか。
孝太郎丈の典侍の局は、
これまで父仁左衛門に寄り添い、
教えを受けてきたことがにじみ出す、
控えめでよい女房ぶり。
典侍の局に立ち返ってからも、
ほどよい気品を漂わせます。
時蔵丈の義経。
普段女方が多いので、
不思議な感覚ですが、
意外な骨太さを感じました。
「渡海屋奥座敷」では、安徳帝を中心に
宮中での様子がよみがえったような華やかさ。
しかしそれは、ひとときだけのことで、
戦果は思わしくないよう。
戦況報告の侍の、壮絶な最期。
岩場から次々と身を投げる官女たち。
典侍の局が安徳帝を抱き、
海に飛び込もうとしたその時、
源氏の侍たちに捕まり、
帝から引き離されます。
戦いの虚しさが身にしみます。
「大物浦」では、傷を負った知盛が、
安徳帝たちを探し求めています。
その前に現れた、源義経一行。
知盛は立ち向かおうとします。
しかし安徳帝はすでに、
義経に擁護されていることを知り、
典侍の局は自害。
知盛はすべてを諦め、
自らを碇に縛り付けて、
海中に沈んで行きます。
仁左衛門丈の衣装、こしらえは、
他のどなたよりも血まみれです。
義経への怨み、執念を感じました。
すべてを諦め、入水する様子は
むしろ爽やかに見えました。
安徳帝を演じたのは、
まだ幼さの残る小川大晴くん。
長丁場ですが
子役らしい発声、立派でした。
最後は祖父時蔵丈の義経に抱かれて
花道を去って行きました。