
歌舞伎座十一月顔見世大歌舞伎、
「井伊大老」を、視聴。
安政の大獄を起こした張本人である
井伊直弼。
歴史的には、悪政を行ったと
評価されることが多い井伊直弼ですが、
本作では表舞台には表れない
心の裏を描いています。
政治の表舞台に登場する前は、
故郷彦根の埋木舎(うもれぎのや)
と名付けた住まいで、
お静とともに暮らしていた直弼。
桜田門外の変で暗殺される前夜、
今は側室となったお静のもとを訪れ、
来し方を語らいます。
直弼にとって、お静にとっても、
埋木舎で過ごした日々は
どんなに思っても、
帰ることのない日々です。
庭の桃の花が春の嵐に揺れ、
雪が吹き込み⋅⋅⋅
雛の宴を楽しむ腰元たちの
笑いさざめく声⋅⋅⋅

世が更け、二人の心情に連れて
雛の灯りがひとつふたつと消え⋅⋅⋅
⋅⋅⋅新歌舞伎らしい
細やかな演出も楽しめる作品でした。
北條秀司の脚本を、新国劇の舞台で上演。
後に、歌舞伎の舞台で、
八世松本幸四郎(後初世白鸚)が
繰り返し上演しました。
これが子息の現⋅白鸚、中村吉右衛門に
伝えられて今日に至ります。