歌舞伎座八月花形歌舞伎、第三部の

「伊達競曲輪鞘當

(だてくらべくるわのさやあて)」視聴。




名古屋山三は実在した人物のようで、

出雲の阿国とともに、

歌舞伎の祖とされています。

 

不破伴左衛門にはモデルがおり、

豊臣秀次の小姓であり、

17歳で殉死した不破万作と言われています。

 

 

元禄好みの派手な衣装に身を包んだ2人が、

夜の吉原の往来で、

恋の鞘当てをする…

 

というだけの演目ですが、

美しい舞台、衣装、

様式的な台詞の応酬や立ち回り、

人気や実力の拮抗した役者たちの芸、

など、見どころの多い演目です。



今回は、若手花形の3人が、
舞台の上で競い合います。

今後の歌舞伎において、
それぞれの役どころとなりそうな
配役になっています。



〈追記〉

今回の演目名は、

「伊達競曲輪鞘當」ですが、

この名前での表記、私は初めて見ました。

 

通常は、「鞘当」と表記されることが

多かったように思います。


「伊達競曲輪鞘當」は、

長唄の曲名のようです。


気になったので、

近年の上演を調べてみました。



2~3年に一度は

上演される人気演目ですが、

2000年以前は上演頻度は

そこまで多くありませんでした。


私も劇場で見たのは、

多分1回のみのようでした。


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上演は他にもありましたが、

代表的なパターンを。



「浮世柄比翼稲妻」

として上演される場合。


2012.11 国立劇場

「通し狂言 浮世柄比翼稲妻

(うきよづかひよくのいなづま)

ー鈴ヶ森の場、山三浪宅の場、吉原仲之町の場」

山三…錦之助 伴左衛門…幸四郎(現・白鸚)

長兵衛女房…福助

*「伊達競曲輪鞘当」長唄連中


2015.10 御園座

浮世柄比翼稲妻ー山三浪宅、鞘当」

山三…錦之助 伴左衛門…又五郎

茶屋女房…芝雀(現・雀右衛門)

*「伊達競曲輪鞘當」長唄連中


2009.9 歌舞伎座

浮世柄比翼稲妻ー鞘當、鈴ヶ森」

山三…染五郎(現・幸四郎) 伴左衛門…松緑

茶屋女房…芝雀(現・雀右衛門)


「浮世柄比翼稲妻」として上演の際は、

四世鶴屋南北 作、と作者名が表記されます。


山三の貧しい浪宅に、

恋人の花魁、葛城がやって来るという、

突拍子もない展開。


あわせて、山三に思いを寄せる、

小間使いのお国の悲恋が描かれます。


豪華な葛城太夫と、

貧しいお国の二役を

一人の女方が早替りで演じる趣向。



そして、「吉原仲之町の場」として

鞘当が演じられます。


この場では長唄の曲である、

「伊達競曲輪鞘當」

が使われることが多いようです。



他に、

白井権八と幡随長兵衛の話が盛り込まれ、

2人の出会いが、「鈴ヶ森」として

描かれています。




「其俤対編笠」として上演される場合。


2018.4 四国金丸座

其俤対編笠

(そのおもかげついのあみがさ)ー鞘當」

山三…梅玉 伴左衛門…橋之助(現・芝翫)

茶屋女房…魁春

 

2013.6 歌舞伎座

其俤対編笠

(そのおもかげむかいのあみがさ)ー鞘當」

山三…勘九郎 伴左衛門…橋之助(現・芝翫)

茶屋女房…魁春



鞘当のみ抜き出して上演される場合、

「其俤対編笠」が用いられるようです


この場合、鶴屋南北の表記はされません。

「伊達競曲輪鞘當」の表記もされません。


この上演形態は、菊五郎家の役者、

中村梅玉丈のみでした。

(勘九郎丈は

曾祖父が六代目菊五郎なので、

菊五郎家の上演形態?)


読みの表記に、揺れが見られ、

対の文字を、

菊五郎家では「むかい」と、

梅玉丈は「つい」と読ませています。



物語は、こちらを参照。

浮世柄比翼稲妻 



八月花形歌舞伎の今回は、

鞘当のみの上演であり、

菊五郎家、梅玉家にゆかりのある役者

ではないので、

長唄の曲名「伊達競曲輪鞘當」を

そのまま使ったのでは、と推測しました。