「小説・江戸歌舞伎秘話」
戸板康二:著

狂言を書く作者によって、
工夫が重ねられてきました。
「元はあか抜けない役であった
五段目の斧定九郎を、
初代中村仲蔵が工夫し、
洗練された型を作った。」
「鶴屋南北は五代目岩井半四郎のために、
『お染の七役』を書き下ろした。」
⋅⋅⋅と言うような、
歌舞伎を観る人であれば
知っているような逸話をもとにした、
ミステリー仕立ての短編集。
ミステリーではあるのですが、
極悪な人は登場しません。
役者、幕内の人たち、市井の人々が、
作者の優しい視点で描かれています。
戸板康二氏の小説を読むのは初めて。
しかし、歌舞伎座の筋書に
エッセイを寄せておられたので、
よく読んでいました。