横溝正史「幽霊座」。
金田一耕助が活躍する、短編小説。
先日、映画の「犬神家の一族」を見て以来、
この小説もまた読んでみたくなりました。
この物語の背景は、
まだ戦争の爪跡が色濃く残る
昭和20年代後半。
浅草にある「稲妻座」という、
架空の劇場が舞台。
東京大空襲でも焼けずに残ったという、
いわく付きの劇場です。
大方の歌舞伎役者が
「会社(明記されていませんがおそらく松竹)」
の傘下に入る中、
「稲妻座」は座付役者を抱える
当時としても珍しい劇場。
作者の横溝正史氏は歌舞伎界について
それほど詳しかったわけではないようです。
しかし、役者たちの描写力はさすが、
優れています。
「稲妻座」の役者は以下のとおり。
佐野川鶴之助⋅⋅⋅稲妻座の座頭。17年前に失踪。
佐野川紫虹⋅⋅⋅鶴之助の弟(実は⋅⋅⋅)。若女形。
佐野川雷蔵⋅⋅⋅鶴之助の遺児。17歳。
ここに、鶴之助のライバルと言われた
水木京三郎とその子 京丸、
鶴之助 紫虹兄弟の姉おりんなどが絡み、
戦前から戦後にわたるしがらみが描かれます。
鶴之助失踪時、
そして今回の殺人事件が起きた演目は、
「鯉つかみ」です。
トリックには、
「鯉つかみ」の舞台装置が使われています。

金田一耕助シリーズの文庫本は、
以前は本屋の一角を占めていました。
前回読みたいと思ったときには、
本屋には全くなくて、
電子版を購入していました。
電子版は置き場所に困らない、
持ち運びが簡単、
文字を拡大できる⋅⋅⋅
と、私にはいいことばかりです。