「菅原伝授手習鑑」① ストーリー編。


今月の歌舞伎座は、
十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善。


昼の部では、「菅原伝授手習鑑」から
「加茂堤」、「筆法伝授」、「道明寺」が
上演されています。

比較的上演がまれな演目なことから、
私は「加茂堤」は3度目、
「筆法伝授」、「道明寺」は2度目の観劇でした。

「菅原伝授手習鑑」の中で有名なのは、
「車引」、「寺子屋」。
毎年1回はどこかの劇場で
上演されているのではないでしょうか。

〈昨年のチラシ〉


逆に「賀の祝」は、
役者が揃わないと上演が難しいことから
あまり掛かりません。
私はまだ、見たことがありません。


「菅原伝授手習鑑」は元は長いお芝居。
歌舞伎では
上演されなくなった場面もあるようです。
どのような場面の並びになっているのか、
調べてみました。

1966(昭和41)年国立劇場開場記念として、
11月、12月に、
2か月続きで上演されたようです。
そのときの上演記録より。


「菅原伝授手習鑑」
〈大序〉
大内山
⋅⋅⋅帝の病に付け入り、
皇位を狙う腹黒い藤原時平と、
陰謀を防ごうとする菅丞相。

加茂堤
⋅⋅⋅天皇の弟、斎世親王と
菅丞相の養女苅屋姫の密会。
仲介したのは桜丸、八重夫婦。
このことが丞相が流罪になるきっかけに。

筆法伝授
⋅⋅⋅菅原丞相は旧臣の武部源蔵に、
筆法を伝授する。
時平の讒言によって罪を着せられる丞相。
源蔵は丞相の一子菅秀才を救い出します。

〈二段目〉
道行詞の甘替
⋅⋅⋅桜丸は飴売りに身をやつし、
斎世親王と苅屋姫を背負い、旅をします。
目指しているのは、
苅屋姫の実母覚寿の暮らす、道明寺の里。

道明寺
⋅⋅⋅菅丞相は、九州へ渡る船待ちの間、
伯母覚寿の元で過ごしています。
時平の秘密の命により、
偽迎えに連れ出されそうになりますが、
窮地を救ったのは、自分が彫った木像。
判官代輝国に伴われ、
苅屋姫、覚寿と別れて旅立ちます。

〈三段目〉
車引
⋅⋅⋅松王丸、梅王丸、桜丸の三つ子の兄弟。
今は敵味方に別れてしまいました。
時平の乗る牛車を引き合う内に、
牛車は壊れ、時平が姿を現します。

賀の祝
⋅⋅⋅三つ子の父親の白太夫。
今日は七十歳の祝いの日。
それぞれの妻もやって来て、
祝いの支度をしますが、喧嘩別れに⋅⋅⋅
桜丸は丞相流罪の発端は
自分にあると悔いて、切腹。
白太夫は丞相側近くに仕えるため、
九州へ旅立ちます。

〈四段目〉
天拝山
⋅⋅⋅九州の地で、時平の悪行を知った丞相は
怒り狂い、雷神と化して都へ飛びます。
丞相の御台園生の前を敵から守り、
桜丸の妻八重は討死します。

寺子屋
⋅⋅⋅菅秀才を討つよう命令され、
苦悩する武部源蔵夫婦。
身代わりに、自分の子を差し出す
松王丸夫婦の悲哀。

〈五段目〉
大内
⋅⋅⋅時平の一味の者たちは、
は雷に打たれて命を落とします。
桜丸夫婦の霊が時平を苦しめ、
命を絶ちます。
菅秀才により、菅原家は再興。
菅丞相は神としてまつられます。

という、長い長い物語です。

このバックボーンを知っておくと、
ぞれぞれの場ごとの上演のときに、
より深く理解できそうです。

〈2018年 一月大歌舞伎のチラシ〉