歌舞伎座、納涼歌舞伎第一部を観劇。





「伽羅先代萩」
七之助の政岡に、
勘太郎の千松、長三郎の鶴千代。
今、ならではの配役。

政岡は幼い君主である鶴千代君の手前、
実子である千松への愛情は、
あからさまには見せないもの。

しかし、仕草の端々に、
母親らしい想いがあふれる
愛情深い政岡でした。


茶道具を使っての まま炊きも丁寧に。
命を狙われている君主を、
守り抜こうとしている緊迫感。

幼い二人がようやく
「にぎにぎ」を食べることができ、一安心。


扇雀の栄御前は、理知的な雰囲気。
幸四郎の八汐は、上品な中に凄みも。

児太郎の沖の井は、
このメンバーに加わっても遜色なく。


「床下」では、
巳之助の荒獅子男之助。
姿も、声も立派。

幸四郎の仁木弾正。
八汐との二役というのは変わっています。
(かつて仁左衛門丈は、
このやり方で出したようです。)

花道のすっぽんから登場、
揚幕に退場のこの役は
3階席からはほとんど見えず、
蝋燭で照らされた後ろ影が
ゆらゆら揺れるのを見ていました。


納涼歌舞伎の中で、古典はこの演目のみ。
若い世代ながらも役者が揃い、
格調高い舞台を見せていただきました。



〈「伽羅先代萩」の覚え書き〉
*栄御前の到来を告げる侍女澄の江は、鶴松。
いつもは模様のある振り袖に、
簪などもさしていたように思いますが、
今回は他の腰元と同じ、桃色の着付けでした。

*千松がなぶり殺しにされるときの、
政岡と鶴千代の動き、
役者さんによって型が違います。
今回は、鶴千代を打ち掛けに隠し、
最後は正面に向き直し座らせていましたが、
他の人の政岡ではどうしていたのだろう?

*八汐を刺す前に、
医師道益の妻小槇が登場し、
八汐の悪事を暴く。
これは初めて見たような⋅⋅⋅

*「床下」の鼠は坂東彌紋さん だそう。
(彌十郎丈のブログより。)

*尾上梅幸丈の「先代萩」見ています。
このとき(平成2年)の千松は七之助、
鶴千代は松也だったそう。
これは全く覚えていません。



次は、こちら。

「闇梅百物語」。
ただただ、
楽しませていただきました。


蝋燭を吹き消し、
気を失った小姓白梅は、
顔を上げるとのっぺらぼう。
ユーモラスながらも、
ちょっとゾクッと⋅⋅⋅

雪女郎の扇雀丈には貫禄が。
虎之介は、若い頃の扇雀丈には
あまり似ていない、と思います。
今回は珍しい女方ですが、
本人に女方志向があるのか。
線は細い方なので、可能性としてはありかと。
踊りの所作はきれい。

傘を持った狸、
河童に出会い傘の取り合い。
傘が宙を舞い、相撲の行司役。
という、ファンタスティックなお話。
傘の甲高い声が耳に残ります。


枯れ野原に浮かび上がる、骸骨。
20数年前の勘三郎さんのときには、
蛍光塗料といった感じの骸骨。
今回は、骸骨自体が発光しています。

この役は、誰がやってもきっと同じよう。
それをあえてやり、早替りをするのが
役者さんの醍醐味なのでしょう。

舞台がぱっと明るくなると、
澄まし顔の読売。
脱な、肩の力の抜けた踊りだと感じました。


最後は狐の姿になり、
花四天との立ち回り。
⋅⋅⋅幸四郎さん、
いつか「四の切」は なさらないでしょうか。
近いうちに、期待します。