開幕は、おめでたい「三番叟」から。
「舌出三番叟」ですが、
舌を出す振り付けはなし。
流派によって違いがあるそう。
芝翫丈の三番叟。
化粧も隈取はとらず、
あっさりしたもの。
恰幅がよく顔も立派で、
勧進帳の弁慶を彷彿とさせます。
魁春丈の千歳。
振袖に素襖をつけた衣裳が
よく似合います。
絵看板では男性の千歳ですが、
今回は女性の千歳で演じられています。
「吉例寿曽我」
箱王(五郎)と一万(十郎)が、
敵と付け狙う工藤の館に入り込むという、
「曽我対面」と同様の設定。
主人工藤祐経の代わりに
奥方が対面することから、
「曽我対面」のパロディと思われかちだが、
数多く作られた
「曽我物」のお芝居のひとつなのだそう。
福助丈が工藤奥方梛(なぎ)の葉として登場。
美貌はそのまま、お声は朗々と。
芝翫丈の箱王、押し出しが立派。
七之助丈の一万、
芝翫と並んでも遜色なく見えました。
児太郎の舞鶴は「暫」のように、
花道から「しーばーらーくー」と
登場する趣向。
この舞鶴という役は女武道であり、
力強い役ですが、力だけではない
色気や洒落っ気なども必要なはず。
次に期待をするとともに、
いつか「女暫」を演じる日も楽しみ。
梅花、芝のぶの局をはじめとした
たくさんの女方が、
台詞もけっこう多く目立ちました。
「廓文章」
幸四郎丈の伊左衛門、
歌舞伎座では初演です。
数年前の明治座で、
伊左衛門を彷彿とさせる役を演じており、
本物の伊左衛門を
いつ見られるのかと楽しみでした。
笠を取った顔の若々しく美しいこと。
なかなか現れない夕霧にやきもきし、
あれこれと思いめぐらす切なさ。
(ちょっと笑いの方向に行きそうな所を、
ぐっと締めていました。
この感じ⋅⋅⋅観ながら、
勘三郎の伊左衛門を思い出していました。)
七之助丈の夕霧。
七之助にはクールな印象があり、
夕霧はどうかなと思っていました。
登場したときには、
すーっとした表情でしたが、
すねる伊左衛門に対する優しさや、
「わたしゃ患うてな⋅⋅⋅」という
はかなさも感じました。
吉田屋喜左衛門は東蔵丈、
女房おきさは秀太郎丈。
「一條大蔵譚」
白鸚丈が何十年ぶりかに
大蔵卿を演じます。
作り阿呆の大蔵卿の柔らか味と、
幸四郎時代の白鸚丈の硬質な芸風は、
合っていなかったのかもしれません。
白鸚を襲名し1年、
今回の敢えてのチャレンジを
素晴らしいと思いました。
また実際に拝見し、
ふんわりとした雰囲気を
まとっているように見えました。
梅玉丈の鬼次郎、雀右衛門丈のお京夫婦には、
長く連れ添ったような情を感じました。
「一條大蔵譚」は近年、
何度か観る機会がありましたが、
いずれも若く、力んだ鬼次郎でした。
今回の梅玉丈は、
肩の力が抜けた余裕のある中で、
役の大きさを見せていたように思います。
魁春丈の常盤御前。
その語りから、3人の幼子を抱え
やむなく敵の平家に従ったという
哀れさが伝わってきました。
序幕の「檜垣茶屋」では、
大蔵卿に付き従う多くの腰元たちが登場。
筋書によると女小姓、腰元総勢16名、
壮観でした。