今年の観劇を振り返り、思うことを⋅⋅⋅。

*高麗屋の襲名
今年は何と言っても、
高麗屋の三代同時襲名で幕開けしました。
歌舞伎座では1月、2月と続けて
襲名披露公演が行われました。

ただ、私は残念ながら予定が合わず、
観れませんでした。
歌舞伎座の後は他劇場での襲名披露が続き、
幸四郎丈を初めて拝見したのは8月。
白鸚丈はまだ、観ていません。



*児太郎の成長
たくさんいる若手役者たち。
それぞれ与えられた役に
精一杯取り組み、成長しています。

そんな中でも、児太郎丈の姿を見るのが
とても楽しみになりました。

今年は雪姫、双蝶会での小町姫と墨染など
大役を演じる機会に恵まれました。
華やかに、また最後まで
役のボリュームを保っていることに感銘を受けました。

「野晒五助」や「幸助餅」での娘役などでは、
いじらしく、控えめな中にある芯の強さも感じました。

児太郎丈が高校を卒業し、
歌舞伎の女方として本格的に活動を始めた年月と、
新生歌舞伎座の年月は一致しています。
(2013年春~)
当初はまだまだぎこちないところもありましたが、
ここまで成長されたこと、感慨深いです。

この間、父福助は病に倒れましたが、
いろいろな方のもとで、
修業に励んでこられたようです。
福助丈の復帰が叶った今、
延期になっていた歌右衛門襲名、
同時に児太郎の福助襲名もいずれ⋅⋅⋅
と期待しています。


*四十代の活躍
菊五郎丈、白鸚丈、
吉右衛門丈、仁左衛門丈たち
七十代の立役の役者さん方は、
精力的に舞台に立たれています。

その下の世代の役者たちでは、
今年は松緑丈の舞台を
多く見る機会を得ました。

松緑丈の舞台姿からは、
存在感の大きさを感じるようになってきました。

これまでには、若くして亡くした
偉大な父、祖父の存在が
影を落としているのか⋅⋅⋅
と感じることも再三ありました。

でも自身、亡父の年齢を越え、
吹っ切れたものもおありなのでしょう。
来年3月には
父辰之助の三十三回忌追善も控えています。


海老蔵、菊之助も四十代に突入。

海老蔵丈の舞台は今年は観られず。
(自分の観劇の傾向として、
観ることができるときに
観られるものを、古典中心に⋅⋅⋅なので。
海老蔵丈の出る公演は
チケットが取りづらかったです。)

海老蔵公演の演目立てを見ると、
座頭として、観客を楽しませるという
スタンスを感じます。


菊之助丈は今年は、
「御所五郎蔵」、岳父吉右衛門の
石川五右衛門に対する此下藤吉郎など
立役が多かった印象です。
舞踊でも「文屋」や
(観ませんでしたが)「喜撰」など立役のもの。
今後もきっと、
立役の路線が多くなるのか⋅⋅⋅


猿之助丈は大怪我からの復帰でした。
(まだまだ全快ではなかったようで、
改めて事故の大きさに驚き。)
どちらかというと自分より、
若手を前に押し出す役回り。
しかし、「法界坊」の大喜利舞踊、
「双面」は圧巻でした。


*清元栄寿太夫の誕生
11月の「顔見世大歌舞伎」、
「十六夜清心」にて清元栄寿太夫初お目見得。

襲名披露はすでに2月に行われており、
尾上右近が清元栄寿太夫を、
兄の昴洋が三味線方の清元斎寿を名乗りました。

右近丈は、歌舞伎と清元の2つの道を
究めていくことを選ばれました。
こんな険しい選択をされた役者さんは、
かつていらっしゃらないでしょう。

伸びやかで堂々とした歌声、
これからどんなものを聞かせてくれるのか
楽しみです。


*それぞれお家の役者さんの活躍
中村京妙丈、「お江戸みやげ」の茶屋の女、
「増補双級巴」のしがらみ などの役が目につきました。

中村梅花丈、中村歌女之丞丈のお二人での
「金閣寺」の腰元は、さすがの風格。

中村芝のぶ丈、8月の国立小劇場での「お舟」、
美しいだけではない底力を感じました。

市川笑野丈、猿紫丈はコンビでの出演で、
脇から盛り上げてくれました。
(「心中月夜星野屋」の娘、「法界坊」のしのぶ売り、
「幸助餅」の餅屋の女中さん。
オリジナルは「ワンピース」ですが、
こちらは観ていません。)

坂東やゑ亮丈、まだお若いですが、
立ち回りで目立っていました。
8月の国立小劇場では「寿曽我対面」十郎の大役を。
研修所の卒業生ではなく、
子役から坂東彦三郎家に弟子入りしたそう。