歌舞伎座を、道路をはさんだ向かい側から。

昼の部の演目は⋅⋅⋅

一、「幸助餅」
尾上松也の幸助。


二、「於染久松色読売」
中村壱太郎の「お染の七役」。


若手の二人が主演の、
清新な印象の舞台でした。



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「幸助餅」

もとは松竹新喜劇の芝居だったものを、
歌舞伎に移したもの。
その歌舞伎での初演は平成17年、
幸助は鴈治郎丈。

今回は歌舞伎座では初めての上演、
幸助も初役の松也。

鴈治郎丈と松也では
持ち味が全く異なるので、
感触がかなり違っているだろうと思います。


松也の幸助。
相撲に入れあげて身代を潰した若旦那。
贔屓力士のことになると夢中になり、
我を忘れてしまうところ、
「角力場」の与五郎に通じるものを感じました。

中車の関取 雷(いかづち)。
着肉を着けた拵えも、
顔の作りも、台詞回しも違和感なく
馴染んでいるように思いました。
それこそ「角力場」や「引窓」の
濡髪長五郎が演じられるようになるのでは⋅⋅⋅

笑三郎の幸助女房おきみ。
幸助よりきっと姉さん女房ですね。
先月の「お江戸みやげ」の、
酒浸りの女方よりずっといいです。

児太郎の幸助妹お袖。
兄思いのけなげで可愛い妹。
一歩引いたような控え目さがありながら、
嫌な来客に対し色めき立ち、
塩を撒くような
ちょっと気が強いところも⋅⋅⋅

幸助の一家は、
それぞれお互いに対し感謝しながら、
感謝の言葉を口にしつつ
暮らしているところが好ましく感じました。

繁盛している
幸助餅の店の人たちも生き生き。
餅をこねる女中さん、
笑野さん猿紫さんも楽しそう。

片岡亀蔵の幸助叔父。
幸助を助けるつもりなのに、
すぐに丸め込まれてしまう人の良さ。
亀蔵さんはこれまで、
凄みのある役々が多く、何となく
裏の顔がありそうな感じでした。
今回は裏表を全く感じさせない
いい人を演じて新鮮でした。


「於染久松色読売」

壱太郎の七役。
どの役にも、
おっとりとした雰囲気が感じられました。

もちろん早替わりは素早く見事なのですが、
ゆったり、はんなりしたものを感じました。
壱太郎さんの持ち味なのだろうと思います。

お染はあどけなく可愛らしく。

心乱れてさ迷い歩くお光の
いじらしさ哀れさ。

久松の頬かむりをした顔にも
はっとするものがありました。


松緑の鬼門の喜兵衛。
大きさ、豪快さがありました。


油屋の悪い番頭は、片岡千次郎
彼はまだ若いですが、上手い。
初老の嫌らしい番頭の雰囲気が出ていて驚き。