歌舞伎の巡業公演東コース。
宇都宮での公演を見てきました。
「近江のお兼」
伝説の力持ちの女性、お兼。
漁師二人がからみますが、軽くあしらい、
琵琶湖名所を織り込んだ詞章にのせて
しっとりと踊りこみます。
梅枝丈の踊りは力強く、ぶれのない動き。
高下駄を履いての布晒しも、
美しく決まっていました。
プログラムによると、
梅枝丈は近江のお兼では、
十七代、十八代勘三郎が目の中にあるそう。
(まだ三十代になったばかりの梅枝丈は、
十七代目については、映像だと思うのですが⋅⋅⋅)
中村屋のイメージを持ちながら、
父時蔵に稽古をつけてもらったそう。
「御所五郎蔵」
立役に役柄を広げている、菊之助丈の五郎蔵。
まだまだ柔らかさを感じます。
今後上演を繰り返し、
また他の立役も経験した上で、
どう変わっていくのか楽しみ。
梅枝の皐月は、役の心情をよくつかんで上手い。
立女方の風格。
米吉の逢州は、皐月の妹分らしいけなげさ、
また主君巴之丞の相手としての格も感じられました。
米吉丈には近い将来、
皐月を演じられる力量を期待しています。
彦三郎丈の星影土右衛門。
この役は、市川左團次丈の持ち役であり、
あの低音の効いた声とともに、
いかにも敵役といった印象が強いです。
今回の土右衛門は、五郎蔵と同年輩、
皐月をめぐって張り合うということでは
理にかなっているように思います。
仲之町の場では、
歌舞伎座などでは両花道が設けられることが多いです。
花道のないこちらでも、
短い仮花道が両側に設けられ、
五郎蔵側と土右衛門側との台詞の応酬を、
両側から楽しむことができました。
「高杯」
菊之助丈、初役「高杯」次郎冠者。
高杯を知らないと言うとぼけぶり。
酒に酔い、高足売りに騙される過程を丁寧に。
高下駄でのタップのような踊りも慎重に。
今後持ち役になるのではないでしょうか。
なかなかに充実した演目でした。
明日は横須賀で千穐楽なのだそうです。
* * * メ モ * * *
星影土右衛門の弟子たちが、
宴会の席で酒が出されると、
「惣誉」と言って笑いを取っていました。
惣誉は栃木県の地酒。
「宇都宮」がどう⋅⋅⋅とも言っていましたが、
よく聞き取れなく残念。
客の入りは1階席はほぼ完売のよう。
2階席は前数列のみで、
その後ろは空いていました。
平日の昼間なので
仕方ないのかもしれないですが、
もったいない。
大向うさんがいらしていました。
ちょっと遠慮がちでしたが、
声が掛かっていました。