今月の歌舞伎座では、
四世中村雀右衛門七回忌追善として、
「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」が上演されています。

年齢を重ねても、瑞々しい女方だった先代雀右衛門丈。
女方舞踊の大曲「京鹿子娘道成寺」は当たり役。
           〈1989(平成元)年12月歌舞伎座筋書より〉

私が見たのはこの1989年のとき。

その後も1991年、1996年に再演されており、
1920年生まれの雀右衛門丈は、
70歳を越えても、この大曲に挑み続けました。
(このショットは現⋅雀右衛門さんとよく似ています。)

「京鹿子娘道成寺」上演の際には、
踊り手の体力を考えてのことか、
「道行」が省かれることも多いですが、
雀右衛門丈は最後まで「道行」を付けて踊られました。

体力と美しさを保つために、
舞台裏でも大変な努力をなさっていたようです。


私が見た、四世中村雀右衛門丈の役々⋅⋅⋅

「熊谷陣屋」相模
「盛綱陣屋」篝火
「野崎村」お染
「五大力」小萬
「恋飛脚大和往来」梅川
「義経千本桜」典侍局
「鏡山」尾上
「実盛物語」小万
「無限の鐘」梅ヶ枝
「四の切」静御前
「葛の葉子別れ」葛の葉
「心中天網島」紀伊国屋小春
「仮名手本忠臣蔵」顏世御前、「道行」おかる
「女鳴神」鳴神尼
「寿曽我対面」舞鶴
「毛谷村」お園
「一條大蔵譚」常盤御前

⋅⋅⋅こういった役では主に自分より一世代若い、
幸四郎(現⋅白鸚)、吉右衛門、
團十郎、孝夫(現⋅仁左衛門)といった
立役の相手を勤めることが多くありました。

若手の彼らと並んでも遜色ない若々しい姿。
当時まだ観劇歴の浅かった私は、
歌右衛門、梅幸、芝翫といった女方と比べて、
本当の女性のようだと感嘆しました。

相手役を立てるということを
第一に考えていたそうで、
その思いは彼らの芸というものを通して、
今に伝わっているように感じます。


舞踊では、
「鷺娘」
「関の扉」小野小町姫
「道行浮塒鴎」女猿曳
「紅葉狩」
「藤娘」
「春昔由縁英」
「将門」

⋅⋅⋅などなど、
本当にたくさんの役を見せていただきました。

衣裳やかつらなど、
美しさを引き立てるこだわりを
随所に感じられる舞台姿でした。