国立劇場で上演されている「隅田春妓女容性」。

上演まれな演目で、前回の上演から40年近く経っています。
「梅の由兵衛」は、浮世絵(役者絵)として有名であり、
その時代は人々によく知られた芝居のテーマだったようです。
元禄の頃に大阪で悪事を働いた人物をモデルに、
江戸の侠客として脚色されました。
中でも初代澤村宗十郎が演じた折、
紫色の頭巾という扮装は評判になり、
現在も「宗十郎頭巾」として残っています。
近年では九代目澤村宗十郎丈が、
1978年に上演しており、
このときの舞台写真を
どこかで見たことがありました。
渡辺保氏の「歌舞伎手帖」にも、
記載があります。
そんな幻のような演目が、
中村吉右衛門丈により今月復活しています。
ところで、
紀伊國屋(澤村宗十郎家)ゆかりの演目を
なぜ吉右衛門丈が⋅⋅⋅
と不思議に思っていましたが、
父⋅初代白鸚、祖父⋅初代吉右衛門も
演じたことがあるようです。
〈あらすじ〉
かつて下総千葉家の重臣・三島隼人に仕えていた
梅堀の由兵衛――梅の由兵衛。
隼人の許から盗まれた千葉家の重宝を探索するとともに、
同じ家中の金谷金五郎と駆け落ちして芸者になった
隼人の娘・小三(こさん)を請け出そうと、
旧知の信楽勘十郎の助力も得て、金策に奔走していました。
由兵衛は、重宝を隠し持つ源兵衛堀の源兵衛、
その一味の土手のどび六らの企みを見抜き、
喧嘩口論を戒める頭巾を脱ぎ捨て、悪事の究明に乗り出します。
一方、由兵衛の女房小梅は、米屋に奉公する弟の長吉に、
密かに小三の身請の金の工面を頼みます。
数日後、由兵衛は偶然、顔を知らない長吉と大川端で出会います。
そして、思わぬ行き違いで義弟を殺め、金を奪ってしまいます――。
志半ばで自訴の覚悟を固める由兵衛。
夫の罪を小梅は引き受けようとします。
そうはさせまいと、由兵衛は源兵衛と対決して重宝を取り戻し、
小三と金五郎をめでたく国許へ帰参させます。
(国立劇場HPより)
渡辺保氏の「歌舞伎手帖」によれば、
由兵衛の女房小梅と弟の長吉は、
一人の役者が早替わりで演じるのが
初演以来の型だそうです。
今回は、尾上菊之助丈が演じます。
また、由兵衛の長吉殺し⋅⋅⋅
自分の所に金を届けに来た若者を、あやまって殺す⋅⋅⋅
というのは、後の「十六夜清心」の求女殺し、
「都鳥廓白浪」の梅若殺しといった作品に
影響を与えたと言われているようです。