今月歌舞伎座で上演されている「名月八幡祭」。

美代吉は、深川芸者。
深川の芸者は、粋で気っぷがいいのが特徴で、
男性のように羽織を着て男言葉で話したそう。
源氏名も、美代吉のように、
「○吉」、「○奴」といった男性のような名前。

そんな江戸の花街で生きる美代吉と、
田舎から出てきた商人の新助の価値観が合うはずもなく、
悲劇の坂を転がります。


〈深川八幡祭が今でも行われる、富岡八幡宮。
数年前に訪れました。〉


祭礼の夜、雨の中の殺し、
舞台では本水を使用し、迫力があります。
美代吉を殺して高笑いする新助。
新助が運び去られると、
誰もいない舞台に昇る満月⋅⋅⋅
印象的な幕切れです。

1990年8月歌舞伎座、
縮屋新助⋅⋅⋅坂東三津五郎(当時、八十助)
美代吉⋅⋅⋅中村福助(当時、児太郎)の舞台を見ました。

二人の役者のニンが、
真面目な新助、奔放な美代吉に
ぴったりはまっていました。

今回の美代吉は市川笑也。
先代市川猿之助の弟子として、
おもだか屋を支えてきた一人。
その笑也さんが
こうして立女形格の役を演じるのは、
感慨深いです。



「名月八幡祭」
作:池田大伍
初演:大正7(1918)年 歌舞伎座

〈あらすじ〉
越後の実直な商人、縮屋新助は
深川きっての芸者美代吉に惚れ込んでいます。
しかし、美代吉は旗本の藤岡慶十郎という
旦那がいるにもかかわらず、
遊び人の船頭三次を情夫にもつ奔放な女。
美代吉は三次から何度も金をせびられ借金を抱え、
深川大祭に必要な百両の大金が用意できず困り果てます。
これを知った新助は、越後に行って一緒に暮らしてもいい
という美代吉の言葉を真に受け、
故郷の家や田畑を売り払い、金を用意します。
ところが藤岡から手切れ金が届き、
金の心配がなくなった美代吉は、
新助をまるで相手にしません。
裏切られた新助は狂乱し、深川八幡の祭礼の夜に⋅⋅⋅
〈歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より〉


この「名月八幡祭」は、
大正時代に作られた新作歌舞伎。
河竹黙阿弥の「八幡祭小望月賑」
(はちまんまつりよみやのにぎわい)
をもとに、池田大伍が書き改めた作品。

「八幡祭小望月賑」が、
もうひとつの「八幡祭」。

長くなりそうなので、明日にします。