今週末は、浅草の三社祭が行われるそうです。


(昨年、浅草で見かけた三社祭の提灯)

歌舞伎にも「三社祭」があります。
今月歌舞伎座で踊られている「弥生の花浅草祭」です。
 一、神功皇后と武内宿禰
 二、三社祭
 三、通人・野暮大尽
 四、石橋
の四変化舞踊です。

坂東亀寿改め亀蔵、尾上松緑のお二人が踊っています。

中でも「三社祭」は躍動感のある楽しい踊りで、
この場面だけ単独で上演されることも多いです。

「三社祭」はまず、浅草寺の縁起を描きます。
漁師である檜前浜成、竹成の兄弟が、
川の中から網打ちで、観音像を拾い上げたという伝説。

(浅草寺前に展示してある由来の絵)

この場面をモチーフに、
漁師姿の二人が舟をこぎ、網打ちの様子を見せます。

〽弥生半ばの花の雲 鐘は上野か浅草の
利生は深き宮川戸···
〽もれぬ誓いや網の目に 今日の獲物も信心の
おかげお礼に朝参り 浅草寺の観世音···

〽そなた思えば七里が灘を···

当時のはやり歌に乗って踊るうち、
空に怪しい黒雲が現れ、二人は悶絶します。

〽かかる折から虚空より 風なまぐさに身に沁むる
〽善か悪かの二つの玉···

雲から善と悪の二つの玉が現れ、
二人に取り憑き、さまざまに踊ります。

この善玉、悪玉は当時江戸で流行したという
「心学」を取り入れたもの。
人は生まれたときは無垢の心だが、
善玉が取り付けば善の心に、
悪玉が取り付けば悪の心になるというもの。

山東京伝の黄表紙で人々に広く知られ、
歌舞伎でも「悪玉おどり」が登場したと言います。

1989年1月、新春浅草歌舞伎のチラシ。
善玉、悪玉の二人が描かれています。
このときまだ30代の
勘三郎丈(当時、勘九郎)、三津五郎丈(当時、八十助)、
はつらつと、息の合った踊りでした。

2012年5月平成中村座。
このときは、「弥生の花浅草祭」として、
市川染五郎、中村勘九郎での上演。
踊りの技を切磋琢磨し合う
二人の心意気が感じられる舞台でした。