もうすぐ始まる、「猿若祭二月大歌舞伎」。

眼目は、勘太郎、長三郎を名乗り初舞台の
中村屋の幼い兄弟の演目、
「門出二人桃太郎」でしょう。


その他にも魅力的な演目が並んでいます。

なかでも、昼の部の「大商蛭子島」
(おおあきないひるがこじま)。
これは上演まれな演目のようですが、
かつて舞台写真を見たことがあります。

少し探したら、見つかりました。

<演劇界 平成2年6月臨時増刊号「女形の美」より>

先代中村芝翫丈の、古風な辰姫。
嫉妬を胸に秘めながら、髪をすく姿です。

おそらく、昭和44年の舞台写真、
芝翫丈はまだ40代になったばかりの頃です。


この演目の初演は天明期、
その後は再演されずに長く途絶えていたのを、
1962(昭和37)年に先代の尾上松緑、
中村歌右衛門らによって復活。
1969(昭和44)年に再演されましたが、
その後上演されていません。

初演の芝居小屋が江戸中村座だった縁から、
今回の猿若祭での上演となったようです。

お芝居のあらすじを、
歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人」からいただいてきました。

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大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)

 伊豆下田で寺子屋を営んでいる正木幸左衛門は大変な好色で、
女房のおふじは夫の様子に悋気する日々。

そんな幸左衛門の家へ、寺入りを希望する若い娘おますや、
一夜の宿を求める地獄谷の清左衛門がやってきます。

実は幸左衛門は源頼朝で、平家追討の野望を持つ身。
おふじは平家方に通ずる伊藤祐親の娘辰姫。

辰姫は夫の大願成就のために、
実は北条時政の娘政子であるおますに妻の座を譲ります。

さらに清左衛門は実は平家追討の院宣を持つ文覚上人で、
上人から院宣を託された頼朝は、
平家討伐の旗揚げを決意するのでした。

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おます実は北条政子に妻の座を譲った辰姫が、
髪をすくシーンで用いられる下座音楽が、
長唄の「黒髪」。

√ 黒髪の 結ぼほれたる 思ひには 
とけて寝た夜の 枕とて 一人寝る夜の 仇枕 
袖は片敷く 妻じゃというて 
愚痴な女子の 心も知らず しんと更けたる 鐘の声 
昨夜の夢の 今朝覚めて 
ゆかし 懐かし やるせなや 
積もると知らで 積もる白雪