国立劇場の観劇、覚え書き。



「五段目、六段目」
勘平の切腹の悲劇に向かって、話は進んでいきます。

「七段目」
祇園一力茶屋の場。
大星由良之助の放蕩ぶりと、仇討ちの本心。


尾上菊五郎さんの早野勘平。
中村吉右衛門さんの大星由良之助。

お二人に共通して感じたのは、
力を抜いてさらさらと演じているように見えること。

忠臣蔵の役々は歴代の役者が工夫を重ねてきたもの。
ともすれば、型にとらわれて手順に追われがち。

お二人とも、長年その役を演じ、
役の気持ちに入り込んだ上での境地なのではと感じました。

今後、他の役者さんの勘平や由良之助を見ることがあれば、
今回のこの舞台をを思い出さずにはいられないことでしょう。


他の役々では…
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斧定九郎は尾上松緑さん、古怪な感じがありました。

千崎弥五郎は河原崎権十郎さん。
以前からよく見ていた役者さんだが、
ここまで台詞や動きのある役は初めて見たかもしれません。
渋味の増してきた今、さらに活躍してほしいと願います。

おかるは尾上菊之助さん。
いつも安定感があります。
いずれは父のように勘平を持ち役にする日が来るのか。

一文字屋お才は中村魁春さん、
この一役ではとてももったいない感じ。
来月「九段目」の戸無瀬を演じるのが楽しみ。

おかやは中村東蔵さん。
悲しみ、恐れ、恨みといった感情を
突っ込んで表現していました。
(今月の勘平とおかやは、
先月「幡随長兵衛」の水野、近藤コンビ。
こういうところがおもしろいです。)

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遊女おかるは中村雀右衛門さん。
二階からの出は、初々しささえ感じます。
兄、平右衛門とのやりとりから勘平の死を知るまで、
けなげでかわいらしいおかるでした。

平右衛門は中村又五郎さん。
力がこもった熱演なのと、
平右衛門という役のひたむきさが重なります。

力弥は中村種之助さん。
役のとおり十四、五の少年にしか見えない。
実際線が細く童顔なのもあるとは思いますが、
夏の「双蝶会」で、あの火の玉のような梅王を演じたのと、
同一人物とは思えないです。