八代目中村芝翫襲名に寄せて、
先代中村芝翫丈の想い出の舞台を…。

<祇園守>
私が歌舞伎を見始めた1980年代後半、
歌舞伎の女形は中村歌右衛門丈を筆頭に、
尾上梅幸丈、先代の中村雀右衛門丈、
さらに、澤村宗十郎丈、先代の市川門之助丈など
とても層が厚かったです。
そのような中で、
当時60代になったばかりの芝翫丈は、
例えば、歌右衛門丈が「籠釣瓶」の八ツ橋を演じれば、
芝翫丈は九重をというように、
二番手の女形としての出演が多くありました。
「伊勢音頭」ならば、お紺ではなく万野を、
「先代萩」ならば、政岡ではなく栄御前を、
「十種香」ならば、八重垣姫ではなく濡衣を、というふうに。
しかし、立女形としても、
時代物では、「熊谷陣屋」の相模、
「盛綱陣屋」の篝火などの風格ある姿。
また、「沓手鳥孤城落月」の淀の方、
「隅田川」の斑女の前、「平家蟹」の玉蟲など、
狂気にあふれる役も印象深いです。
「一本刀土俵入」のお蔦、
「魚屋宗五郎」のおはまや
「芝浜皮財布」のおたつのような世話の役々も演じ、
とてもリアルな印象を受けたことを覚えています。
舞踊の名手でもあり、
「将門」の滝夜叉姫、「茨木」の真柴、
「保名」、「お夏狂乱」など…
「京鹿子娘道成寺」では、
中啓の舞は気品にあふれ、
毬歌や山尽くしは動きにぶれがなく、
恋の手習いでは、
その場にあたかも相手がいるような描写力でした。
心に残っているのは、「お江戸みやげ」のお辻。
真面目でしまり屋のお辻が、
一世一代の恋のためと大金を投げ出します。
そんなお辻のかわいらしさ、
享楽的なおゆう(澤村宗十郎丈)とのコンビも良く、
印象深いです。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
七代目中村芝翫丈は幼くして父、五代目福助と別れ、
(父は「慶ちゃん福助」、美貌の女形だったが、
30代前半で夭折した。)
祖父五代目歌右衛門のもとで育つ。
しかしその祖父も12のときに亡くなり、
祖父の遺言に沿って、
六代目尾上菊五郎丈のもとで修行をした。
この六代目からの教えが、芸の上での基本になっている。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
先代芝翫丈、「神谷町!」の大向こうも懐かしいです。
私が見た最後の舞台は、亡くなる前年の2010年、
新橋演舞場での「梅の栄」。
歌昇(当時、種太郎)、種之助、
尾上右近、米吉といった若手、
孫の宜生(新・歌之助)とともに
華やかに踊っていた姿が目に浮かびます。
先代中村芝翫丈の想い出の舞台を…。

<祇園守>
私が歌舞伎を見始めた1980年代後半、
歌舞伎の女形は中村歌右衛門丈を筆頭に、
尾上梅幸丈、先代の中村雀右衛門丈、
さらに、澤村宗十郎丈、先代の市川門之助丈など
とても層が厚かったです。
そのような中で、
当時60代になったばかりの芝翫丈は、
例えば、歌右衛門丈が「籠釣瓶」の八ツ橋を演じれば、
芝翫丈は九重をというように、
二番手の女形としての出演が多くありました。
「伊勢音頭」ならば、お紺ではなく万野を、
「先代萩」ならば、政岡ではなく栄御前を、
「十種香」ならば、八重垣姫ではなく濡衣を、というふうに。
しかし、立女形としても、
時代物では、「熊谷陣屋」の相模、
「盛綱陣屋」の篝火などの風格ある姿。
また、「沓手鳥孤城落月」の淀の方、
「隅田川」の斑女の前、「平家蟹」の玉蟲など、
狂気にあふれる役も印象深いです。
「一本刀土俵入」のお蔦、
「魚屋宗五郎」のおはまや
「芝浜皮財布」のおたつのような世話の役々も演じ、
とてもリアルな印象を受けたことを覚えています。
舞踊の名手でもあり、
「将門」の滝夜叉姫、「茨木」の真柴、
「保名」、「お夏狂乱」など…
「京鹿子娘道成寺」では、
中啓の舞は気品にあふれ、
毬歌や山尽くしは動きにぶれがなく、
恋の手習いでは、
その場にあたかも相手がいるような描写力でした。
心に残っているのは、「お江戸みやげ」のお辻。
真面目でしまり屋のお辻が、
一世一代の恋のためと大金を投げ出します。
そんなお辻のかわいらしさ、
享楽的なおゆう(澤村宗十郎丈)とのコンビも良く、
印象深いです。
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七代目中村芝翫丈は幼くして父、五代目福助と別れ、
(父は「慶ちゃん福助」、美貌の女形だったが、
30代前半で夭折した。)
祖父五代目歌右衛門のもとで育つ。
しかしその祖父も12のときに亡くなり、
祖父の遺言に沿って、
六代目尾上菊五郎丈のもとで修行をした。
この六代目からの教えが、芸の上での基本になっている。
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先代芝翫丈、「神谷町!」の大向こうも懐かしいです。
私が見た最後の舞台は、亡くなる前年の2010年、
新橋演舞場での「梅の栄」。
歌昇(当時、種太郎)、種之助、
尾上右近、米吉といった若手、
孫の宜生(新・歌之助)とともに
華やかに踊っていた姿が目に浮かびます。