今日昼間はほどほどの暖かさでしたが、
夕方から冷たい雨が降り始めました。

春の歩みはわずかずつです。

今朝、撮影した菜の花。

母が菜花として栽培しています。
春先、3月頃からつぎつぎに出る
花芽を摘み取っておひたしにします。
ほろ苦い春の味で私も大好きです。

ところが、暖かかったこの冬は、
12月から花が咲き始め、今はもう満開です。


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菜の花が咲く、歌舞伎の舞台、
清元の舞踊「保名」もそのひとつです。

恋人 榊の前を亡くした安倍保名は、
形見の小袖を持って、野辺をさまよいます。

「保名」
恋よ恋 われ中空になすな恋 
恋風が来ては袂にかいもつれ
思う中をば吹き分くる 花に嵐の狂いてし
かたしく袖の片思い 
姿もいつか乱れ髪 誰が取り上げて言う事も
菜種の畑に狂う蝶 つばさ交わして羨まし 
野辺の陽炎はる草を
素襖袴(すおうばかま)に踏みしだき 
狂い狂いて来たりける

…亡き人を思うあまり、
気が違ってしまった保名の様子を
切なくうたい上げます。

こういった、清元の聴かせどころを
自分の頭の中で再生しようとすると、
清元志寿太夫さんの声がよみがえります。

百歳過ぎまで歌舞伎座の舞台に立った…
正確には清元の山台に座った太夫。
その声は3階席まで朗々と響き、
心の底を揺さぶられるような思いがしました。