6月の歌舞伎公演、
どちらの劇場も千穐楽を迎えたようです。

7月は国立劇場では引き続き、
歌舞伎鑑賞教室が行われますが、
演目は変わって「義経千本桜ー渡海屋・大物浦」です。

平家物語を題材に、歌舞伎らしい大胆なアレンジで
平知盛の最期を描いた場面です。
碇をかついで海中に飛び込むシーンは、
初めて歌舞伎を見る高校生に
強いインパクトを与えることでしょう。


そして、歌舞伎ファンにとって
インパクトがありすぎなのは今回の配役、
平知盛に尾上菊之助です。

これまで女形中心だった菊之助さんですが、
近年は「世話情浮名横櫛」の切られ与三郎や
「雪暮夜入谷畦道」の直次郎など、
立役も演じるようになりました。

しかしながら今回は、碇知盛という骨太の役です。
岳父 中村吉右衛門の芸を受け継ぐ、
という意味もあるのかもしれません。


心なしか、吉右衛門さんに似て見えます。
顔の作り方など、
教えていただいたのかもしれません。


菊之助さんのお父様、尾上菊五郎さんも
若い頃から40代までは
時折立役を演じるものの、女形中心でした。
端正な美しさのある舞台姿が大好きでした。

その菊五郎さんが、
「魚屋宗五郎」を初役で演じると聞いたときには、
何か嫌な気持ちがしたものでした。
後日テレビ中継で見た舞台は
素晴らしいものでしたが、やはり、
「あんなにきれいなのに、もったいない…」
という思いでした。

その後の菊五郎さんは立役中心になり、
今では女形はほとんどされなくなりました。
菊五郎劇団の座頭としての選択だったのでしょう。
(6月歌舞伎座では、
珍しい女形姿を披露されたようです。
もっとも、「夕顔棚」のお婆さんでしたが。)


まだまだ若い菊之助さん、
これが分岐点になり、今後は立役中心になるのか
あるいは兼ねる役者として活躍していくのか、
注目していきたいです。


この公演、人気がありすぎてチケットが取れません。
発売日のうちに売り切れてしまったようです。
鑑賞教室としては異例のことではないでしょうか。