毎年地元のお祭りに参加するたび、大胆に肌を露出した素敵な彼の背中を、こっそり目で追うのが楽しみ。そんな彼が、独身に戻った。いつもリーダー的役割を果たしている彼。みんなを鼓舞するための言葉が、何故か意味ありげに聞こえてしまう。

寂しくなった初めての夏。

今年も私は、年を重ねたなりの、出来る限りの露出をした格好で、何とか彼の視線に収まるようにと、祭りに参加。

気のせい。

そうなのかも知れないけど、今年は何だか、彼との距離が近いような気がしてならない。

祭りの活気と、汗ばむ肌。

この辺て、あらためて見てみると、「路地」が多いんだなぁ。

自然と、目が行く。

薄暗がりで、その前を通ると、ひんやりとした風が肌を撫でる。そして、一瞬無音。


祭りの喧騒とは真逆の空間。





遠くで祭囃子と、担ぎ手たちの勇ましい掛け声。

この空間だけ、二人きり。

二人の汗ばむ肌が吸い付き合う。

彼の首に腕を回すと、ひんやり冷たい。

汗が流れ吸い付き合う肌と、ヒヤリと冷たい彼の首筋の温度差に、一瞬にして二人きりの世界へ。

彼の首筋に腕を回したまま、彼の端正な顔を見上げる。

彼の手は、私の腰の辺りにやんわりと置かれている。

一瞬のような、長い時が過ぎたような時間、彼と見つめ合う。

どちらともなく顔が近付いて、唇が重なる。
互いの唇が半開きになり、舌と舌が絡まり合う。
粘膜の擦れ合う音。
遠くからかすかに聞こえてくる祭囃子。
ひんやりとした風が二人を包み込んで、互いの体温が交わる。

体温を感じ合って、興奮も高まる。

鼻から抜ける空気の量が増し、顔面を撫で、唇が変形するほどに激しく貪り合う。

時折、歯と歯がぶつかってガチッと、鈍い音を立てるが、今の二人にはそんなことすら欲望を駆り立てる要素でしかない。

さすがにここで交わり合う訳には行かないので、その欲望を少しでも昇華するように互いの体をぶつけ合い、擦り付けながら唇を奪い合う。

そして、情熱的すぎるキスのあまり、唇がしびれ始めると、ピタリと二人の動きが止まり、互いの唇を静かに押し当てると、暫くして名残惜しそうにそっと唇が離れる。

言葉もなく抱きしめ合い、彼の唇が、そっと私の首筋にあてられ、そっと離れた。

彼の優しいキスに、もう一度彼の顔を見上げる。

唇が再び重なり、静かに離れた。