はじめに
人が誰かに「名前を呼ばれる」ということは、
ただの呼びかけではなく、
その人の存在を“認める”ということ。
──君が最後に呼んだ、僕の名前には、どんな意味があったんだろう。
① 100回目の朝
あの日から、もう100回、朝を迎えた。
でも君の声で目覚める朝は、ひとつもなかった。
② ボイスメモ
壊れたスマホのデータを、ふと思い出して修復した。
最後に録音されていたのは──君の声だった。
③ 「遥人くん」
再生ボタンを押すと、君の声が小さく震えながら、僕の名前を呼んでいた。
それだけで、世界が止まった。
④ 名前の響き
「遥人くん、今、幸せかな…」
「私はね、あなたの“名前”が、世界で一番好きだった」
涙が溢れそうになって、画面を見れなかった。
⑤ なぜその名前を?
小さい頃、僕は自分の名前が嫌いだった。
でも、君は違った。いつも、名前を丁寧に呼んでくれた。
⑥ 君の想い
「“遥人”って名前には、光があると思ったんだ」
「あなたの存在そのものが、私の道しるべだった」
録音の最後、そんな言葉が残っていた。
⑦ 名を継ぐ
僕はその日から、あえて名前で自己紹介するようになった。
君が好きだった名前なら、自分も好きでいたいと思った。
⑧ 呼ばれるたびに
誰かに名前を呼ばれるたび、君の声が重なる。
きっと、どこかで君が「よくできました」と微笑んでくれている気がした。
おわりに
「名前」は、生まれた瞬間に与えられた最初のプレゼント。
でもそれが“意味”を持つのは、
誰かがそれを大切に呼んでくれたとき。
君がくれたその声は、
今日も僕の中で、静かに生きている。