今季終了後にフリーエージェントになるロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平が他のチームに移籍する場合、米メディア間では総額6億ドル(約866億円)の記録的な大型契約になるともいわれている。この数字は彼の実績・実力から妥当といわれている。2013年に19歳で日本ハムに入団した際、契約金1億円に加えて出来高5000万円、年棒は1500万円だった。2014年に年棒は3000万円に、2015年には1億円になる。入団3年目にして1億円は松坂大輔以来2人目の快挙となる。翌16年には2億円に倍増。

歴代の有名選手で年俸1億円を越えた選手は、田中将大とダルビッシュ有が4年。イチローは5年かかった。ちなみに新庄剛志は12年かかった。いずれの選手もメジャーリーグ経験者だが、これを見ても大谷のすごさがわかろう。日本ハムでの最終年となる17年は2億7000万だった。日本ハム入団前から、メジャーリーグに強い憧れがあった大谷は、2017年のシーズン終了後、ポスティングシステムを利用しアメリカメジャーリーグ移籍を決意。その際日本ハムには移籍金2000万ドル(22億円)が支払われた。

 

  

ところが当の大谷はエンゼルス入団の年棒は、日本円にしてわずか6000万円で、これには理由があった。メジャーリーグの選手の年俸は労使協定で定められており、海外の選手がメジャーリーグでアメリカの選手と同じ扱いになるには「25歳以上で、かつ自国内でのプロ経験が6年以上」という条件がある。大谷翔平選手は海外の選手であり、移籍した当時は23歳でプロ野球の経験も5年だったために、メジャーリーグではアマチュア扱いということになる。そのため、マイナー契約からのスタートだった。

さらにはマイナーからメジャーに昇格しても大型契約は禁止となり、したがって、大谷のメジャー1年目の年俸は全選手中最も安い最低保障額だった。あと2年、日本でプレーしていればアメリカの選手と同じ扱いになるところが、大谷選手の強いメジャーリーグ志向からしてゼニカネは問題ではなかった。そういう野球に対する純粋さが、現在の大谷選手を作ったといってもあながち間違いではないかも知れない。敬愛する堀秀彦は「人間は年齢にふさわしく生きることが大切である」という言葉を残した。

「年齢にふさわしく生きるということは年齢にふさわしい若さを持つことである」といったゲーテの言葉をアレンジしたもので、50歳の人が20歳のように生きることや、20歳の人が50歳の人のように、早くから考え方や感じ方の点において、年寄じみてしまうことを戒めている。「おとなしい」という言葉で子どもを褒めるが、「おとなしい」とは「おとならしい」という意味であって、これは大人にとって都合のよい子どもを作りたいという気持ちの表れである。子どもは子どもらしくわんぱくがいい。

いつも自分に正直でなければ本当の成長はないのではないか。大人の物差しを受け入れて背伸びして行動するなどバカげている。もう一つ好きな言葉はフランスの画家であるモローの以下の言葉。「成功しないということは感謝すべきだ。少なくとも成功は遅く来るほどよい。その方が君はもっと徹底的に自分を出せるだろう」。大谷は早くから成功したではないか。藤井聡太は若干20歳にして将棋界のタイトルを総なめしようとしている。これを成功といわずしてなんという。そういう声も聞こえてくる。

 



言葉尻を捉える前にしかと大谷選手や藤井聡太を見つめてみるがいい。彼らは自身が成功したなどと微塵も思っていないように見えるが、おそらくは誰の目にもそうであろう。800億もらおうが8冠のタイトルをとろうが、そんなことは彼らにとって成功とはいわない。大谷は投手として9回までの全員を三振に打ち取りたい。聡太は全対局を勝利で飾りたいと思っているなら、それこそが彼らにとっての成功ではなかろうか?あり得ないことだが、それほどに成功というのは高い目標を掲げる者には遠い道だ。

どれだけ金を稼ぐなどはこの二人にとってはどうでもいいこと(に見える)。いつも思うはゴルフの石川遼のこと。彼は10代という若さで成功を手にしたようで、その軌跡を見るとはしゃぎまくっていた父親に現れていた。2009年に18歳で「石川遼記念館」を建て、2012年には21歳で自伝を書いている。どちらも人間に苔が生えるころにやるものと自分には映るが、酷な言い方をするなら自伝を書いた時点で、彼の成功は終焉したといっていい。ライバルと目された同年の松山英樹には大きく水をあけられた。

ばかりか台頭する若手にも太刀打ちできなくなっている。人間は坂を転がり始めると早いといわれるが、10代で頂点を迎えたと彼に思わせた周囲が悪い。銀行マンだった父の金銭執着が成功=金という図式を見出した。もう一人はハンカチ王子こと斎藤佑樹で、彼に成功があったとするなら高校~大学時代ということか。彼にとって成功とは人気ということで、プロとしての力量はないのは分っていたが、日本ハム球団の北海道移転のファン獲得ために人気のある斎藤をとったと球団関係者が漏らしていた。

斎藤も同期の田中将大には大きく水をあけられ、プロとしての力がなければ人気も陰るのは当然。松山と田中に比べて石川と斎藤はイケメンである。昔から色男には力がないといわれたものだが、石川の場合には本業以外の収入が懐を潤おわせたようだ。斎藤にもタニマチファンが彼を潤わせたという。そんな大谷にいち早く目をつけていたのがメジャーの球団のニューヨーク・メッツの一ファンの11年前の以下のツイートが話題になっている。「やあ、サンディ。この選手とサインしなければならないよ。

 



大谷翔平は日本の18歳で、100マイルを投げるんだ。他のチームが動く前に獲得しよう」。サンディとは、当時メッツでゼネラルマネジャーを務めていたリチャード・アルダーソン。ひとりのファンがチームのGMに、当時18歳でプロ入り前の大谷の獲得を進言していた。もちろん、ファンの進言が球団幹部に通じるわけもなく、大谷は2013年に日本ハムと契約をかわし、2018年からエンジェルス在籍だが、現在のメッツのGMは、2017年末に大谷を獲得した当時エンジェルスのGM、ビリー・エプラー。

エプラーには再び“大谷獲得”のチャンスが巡ってきているということになるのだろうか。大谷争奪戦は水面下で火花を散らせている状況で、移籍先候補には、資金力の豊富なニューヨーク・メッツ他に、ニューヨーク・ヤンキース、ロサンゼルス・ドジャース、サンディエゴ・パドレスなどの名前が挙がっているが、これほどの逸材を逃したチーム、見誤ったチームの悔しさはいうに及ばずで、果たしてエンゼルスが大金を積んで残留させるのか、大谷の希望である優勝争いに食い込むチームに行くのか。

大谷選手は今日も29号ホームランを打った。むかし「鉄人28号」ってのがあったが、29号は鋼鉄人か。ホームランを打つコツというのか、ポイントを知っているんだろう。無安打の日もあるにはあるが、これまでスランプというほどのことはなかったでしょうか。大谷と藤井聡太という人物がいるだけで、こんなに世の中を楽しくしてもらえるわけで、それも無料で…。この二人は超の上に超のつく人たちなので堪能させられる。大谷選手の投打の活躍と、藤井聡太名人の8冠ロードに興味津々の日々…