「世の中にはとんでもない男がいる」というのが、今回の事件のみならぬ、過去に男の凶暴性から命を落とした女性に対する無念の心情か。どのような防衛手段を講じたところで、ストーカーを柱に縛り付けておかない限り、被害に遭遇することを防ぐことはできない。テレビ番組では、元警察官や元ストーカー行為者らが、あれこれ持論を述べてはいるものの、「キチガイに刃物」を持たせてはどうにもならないというのが実態だ。あらゆる対策が意味を持たないならどうすればいいのか?

「このような凶暴性のある男」、「どうにもならぬバカ男」たちをどう判断し、そういう男と関係を持たぬよう自らを律するしか防衛手段はないと思うが、それは無理なことなのか?「息子は短絡的で、思い通りに行かないときは八つ当たりする性格」と実の母が語っていたが、事件を起こした後の情報であって、こういう男と付き合う女性が母親の情報を事前に得ることはできない。寺内容疑者の知人も、「事件を知って驚いた。そんなことをするような奴ではなかった」と述べている。

 



こうした情報も事件後にマイクを向けられて答えているにすぎない、女性がある男と付き合う際、その男をどう品定めするかはその女性の判断によるしかない。「人を殺す可能性を秘めた凶暴性」、「路上で馬乗りになってメッタ刺しにした後に、ダテメガネをかけたり変装したり偽名を使ってカラオケ店に入店するような知能程度の低いバカ男」に対する想像力を駆使し、こういう男と付き合うかどうするかを思考・選別するような女性は、皆無とまではいわないまでも少ないのではないか。

人と人がつき合うきっかけの多くは感性やフィーリングで決定されることがほとんどだろう。自分は男だから女性の凶暴性やアタマの悪さを特に重視したりはないが、若い頃は眩しい胸に惹かれ、やさしさに惹かれたりと、そんなところだ。一つだけ注視した点は、この女性は母親のような嘘つきで口うるさくて頑固であるかどうかが重要だった。言い合いになる強情女は避け、大人しい女性のなかに真の女性らしさを見出していたので、母親もどき性向が少しでも見えると交際を断った。

分かりやすくいうと、多少なり母親の気質が見えただけで、その女性を女性として見ることができなった。自分の女性選び、恋人選びは、母親を徹底的に反面教師にしたことだから、分かりやすい女性観といえるかも知れない。母のような思慮のない女ほど迷惑な人間はいない。反面アタマのよい女性には、教わることが多く、交際は充実する。寺内容疑者は「面白くて楽しい人」のイメージで、女性にもモテたというが、性格の裏の面をどの程度許容できるかの判断も、人の全体を見る点で重要となる。

とはいうものの、人を殺すような人間は、人を殺すまで実態は分からないものだが、危険な因子は交際すればいろいろ感じられるはず。寺内容疑者は犯行後に変装するなど、知能は幼児的である。繁華街で人を刺し殺して変装で何とかなるという発想は、相当のバカといっていい。こんなバカでも面白くて楽しければ女性はつき合う相手に選ぶというなら、好みと自己責任の問題である。自分には絶対に不向きな女性観があったように、暴力的で言葉もきつく、キレやすい男は避けるべきと思うが…

 

 



そういう一面が現れたとき、我慢をし続けるより、どうすればうまく離別に持っていくことも恋愛のテクニックである。別れ方を上手くやれる人間こそが恋愛の熟達者といっていい。人を傷つけるわけだから、慎重で周到でなければトラブルを招きやすい。彼女は警察などにストーカー保護を求めているが、人によっては効果もあるが、今回のように、火に油を注ぐことにもなる。大事なことは相手がキレやすい男かどうか、社会的に認められた勤務先であるかどうかなどの判断が大事となる。

男は社会を背負って生きるものだから、社会的に認知された職業に従事する男は、そうそうバカなことはできない。つまり、警察にストーカー被害の保護を求めるにせよ、上場企業勤務の男とバーテンダーとでは事情がまるで違う。職業差別というではなく、男が背負っているものの大きさが違うということだ。警察もそこは承知をしているが、「堅い会社に勤める男なら効果もあるが、水商売男だからね~」などとは口が腐ってもいえない。つまり、そういうことは女性が考えなければならないこと。

 



「別れたいけど別れてくれない」という女性から相談を受けたことが何度かある。男の一人はどうやらマザコンのボクちゃん男であった。当時はまだストーカー規制法などはなかったが、そんなものは何の役にも立たないという程度の実感だった。見方を変えると、警察に用意された言い訳の一つという認識だった。事件や事故の捜査をする警察だが、民事不介入の原則が警察であり、事件や事故の防止に取り組んでも昇進には何のプラスにならないゆえに、本腰を入れないのは明らかだった。

ボクちゃん男には「しつこく付きまとうなら警察にいう。逮捕されても知らないから」の一言で効果があった。自分も相手の電話番号を聞いて、「女はいくらでもいるだろう?つまらんことで社会的信用を失うんじゃない」と伝える。聞き分けのいい男もいればそうでないのもいるが、問題なのはもう一人の男だった。言葉も暴力的でオラオラタイプだった。一筋縄ではいかないことを念頭に、自分が授けた知恵は、女に徹底して「お願い」させること。土下座も容赦ないほどにアタマを下げさせる。

自尊心の高い男ほど謝罪の効用は高い。だから、一にもお願い、二にお願い、三・四がなくて五にお願い作戦を敢行させた。彼女には「演技だからしっかりやれよ。相手は必ず聞き入れてくれる」とアドバイス。余計なことは一切言わないよう、ひたすら「お願いします」。「一人にしてください」。「他の相手を見つけてください」という言葉だけ。数か月後、男は別れることを承諾した。プライドの高い男に最適なのはお願いすること。それを踏まえて今回の川野さんの行動はどうだったのかを感じる。

 

 

彼女は昨年の秋くらいから別れを意識しはじめ、寺内容疑者を避けるようになったが、寺内は会社で待ち伏せをするようになったという。問題なのはこの時彼女がどういう態度を取ったかである。川野さんは実家に親と同居だから押しかけるわけにいかない。だから会社に現れる。おそらく気の強い川野さんが、無視したり、キツイ言葉を投げかけた可能性もある。もしも自分がいうような懐柔策を用いるなら、無視したり避けたりするより、しおらしい態度でお願いしまくる方法もあったはずだ。

「バカ男にアタマなんか下げたくない」気持ちがあったかも知れぬが、「損をして得をとれ!」という知恵は理性的であるゆえに効果が期待できる。地べたにアタマをつけて「お願いします。どうか自由にさせてください」という演技力で収める手もあったろう。男の自尊心に訴えかけて悪い気持ちになる男はいない。オラオラ男ならなおさらだ。気の強い川野さんが、容疑者を本気に怒らせたと推察する。終わったことに何をいってみても「タラ」でしかないが、この男に警察は逆効果だった。