「昔から 俺……
 
 独りになりたい時に よくここへ来るんだ」





「……」




「誰かを 連れて来た事は 一度もないな……」





      そんな 大切な居場所に

      私を 連れて来てくれたの???



      先生…… 私 自惚れてしまいそう





視線は 眼前に広がる夜景を見詰めたまま

一瞬の迷いの後 意を決した様に 言葉を発した




「俺は 昔……」



先生は 今までの自分の事を ゆっくり

でも はっきりと 話し始めた⇒参照:告白


噂は その殆どが 事実だった

そして 最も知りたかった 疑問の答えを 最後に知る




核心に触れる前

先生は戸惑いながら ほんの少しの間だけ 

耳のピアスの辺りから頬にかけて ゆっくりとなぞった



その指先は 何故か いつもの様な 氷の冷たさは感じず

逆に 微熱を帯びて 私の心を 翻弄する




「―噂は 事実」



「!!!」



「そして… それが真実だ」


  
    嘘!!!



嘘だと 言って欲しい


いつもみたいに 呆れ顔で 『バカだな』 と言って欲しい


そして 苦笑いしながら 『心配するな』 と言って

私を 安心させて 




けれど 

漠然とだけど    

心の底では 『噂は本当かも知れない』 と囁く声が聴こえていた



その方が 先生らしい結論だ という事も解っていた

最も 正しい選択だ という事も………