「何か 腹減ったなぁ」



「…そう ですね……」




胸が高鳴って それどころじゃない私は

曖昧な返事を返すのが やっとだった



すると 車に乗って 初めて私に視線を寄こし

口唇の端を少し引き上げて ニヤリと笑う


そんな表情だけで 幸福を感じる 私




程なく 車は道沿いのファーストフード店の

ドライブスルーへ入った




     誰が 食べるの?




というくらいの量を Take Out する


途端に 車の中は フライドポテトの匂いで

充満する



急に 私のお腹が 空腹を訴え始める


慌てて お腹を押さえる仕草を見て 思わず噴き出す 先生




「どうでもよさそうな返事の割には

 ちゃんと主張してんじゃん」




「……………」






暫くして 小高い山の上にある 駐車場で

車は停まった




「ちょっと 寒いな」



そう言いながら ファーストフードの袋を片手に

車を降りる



近くのベンチで 腰を降ろす先生に習って

私も 隣に座る


眼の前には 市街地の夜景が 一望出来た


勤務先の病院も 遠くに見える



無造作に 袋から取り出したハンバーガーを

私に渡し、先生も食べ始める



    
     初めて 食べる姿 見るなぁ




なんて喜びを噛み締めていた時

ある事に気付いて 私は 笑ってしまった