「チャンスなんて ないよ!!!

 これからも この先も
 
 私は その人しか 考えてられないもの!!!」





柔らかな微笑みの奥に潜む 彼の思惑に

引き込まれそうになる



私は 自分自身に言い聞かせる様に きつく言い

足早に 駅舎へと 急ぐ



彼は 直ぐに 私に追い付き 追い越し

私の前を 遮る






「すぐに 結論 出さないで

 もう少し ゆっくり考えてみて

 そして 僕を知って

 それから 答えを 探して」






駅舎の構内へ入ろうとする 私の腕を 掴むと

そのまま 反対方向へ 迷いなく 歩き出す





「ちょっ 何処へ!!!」










「乗って!!」





そう言いながら 私を タクシーへ押し込む






「いくら 駅舎までしか 送らせてもらえなくても

 その後が とても 心配だからね」






そう言うと 紙幣を一枚 私の手に 握らせて

勢いよく ドアを閉めた





後部座席から 振り向いて 遠ざかる彼の姿を 見詰める


視界から 消えてしまうまで 彼は 立ち続けていた





今の 私にとって

彼は とても 危険だ





     彼を 好きに なれば???






そう 囁く もう一人の 私が いる


自分の 心に 負けそうに なる