「浮かない顔 してんね」





騒々しい店内の中で 

その声は はっきりと 聴こえた



輪の中心にいたはずの彼が

いつの間にか 私の隣にいた



急に話し掛けられて 焦る私





「そ そうかな? 楽しいよ」





     何の話題で 盛り上がってたっけ?





乾杯の後 手付かずだった レモンサワーを

グイっと 流し込む



溶けた氷で 味気がなくなったサワーが

喉元を通って行く





「ね 急だったのに 結構集まったよね」



「ま 僕の人脈のおかげかな?」





さらりと流す言葉には 少しの嫌味も感じさせない


これも 彼の魅力の 一つだ





「ほんと そうだね

 同期会なんて 初めてだね

 幹事 大変だったでしょ」



「まぁ ね  

 でも 僕には 裏に 魂胆があるから」





     魂胆???





首を傾げる私に

彼は 人差し指を口唇の前で 立てながら

私の 耳元で 囁く


誰にも 気付かれない様に……





「ねぇ 途中で抜けて 何処かへ 行かない?」