規則正しいエンジン音と 落ち着いた曲調のBGMに

私の意識は朦朧として来ていた



やはり ここ数日間の引き継ぎは

思わぬプレッシャーとなっていたのだろうか

緊張から解けてしまった様に

急速に睡魔が襲ってくる……



何度か落ち掛けては 頭を振い 眠気と戦っていたが



その後は 暫く 記憶は途切れてしまった……







目を開けた時には 既に先生は運転席に戻っていた

一体 いつドアを開閉したのかも気づかない程

深い眠りに吸い込まれていた




     足元が温かい




先生の 紺のジャケットが

ウエストの辺りから足にかけて

ふわりとかかっている




     先生…………




「すみません ありがとうございます」




と言いながら 先生に手渡す



煙草の灰を灰皿に落としながら 

先生がジャケットを受け取った





その時 ほんの一瞬 私の指先が先生の指先に触れた



その時 先生の指先が私の指先に 意味を持つ様に

絡まりかけた 様に感じた