「んじゃ、そこらへん座れ」


あ、そうだ ピアス開けるんだっけ


途端に、冷や汗、手に汗、訳の分かんない汗が出てきて

私は決心が鈍らないうちにソファーに座り目を閉じた



冷たい指先が、私の両耳を消毒する


消毒綿のエタノールの匂いに紛れて

微かにベビーパウダーとシトラスの香り



「で、どこにする?」


「あ、はい・………」



咄嗟に目を開けると、ほんの10cm先で

耳たぶの辺りを見ている顔がある



「っ!」


慌てて体を後ろに引く

上半身がぐらつく



「おい、どこか決まってんのか?」


「いぇ 適当でどうでしょうか」


「何それ(笑) じゃぁテ・キ・ト・ーに」


と言ってピアッサーを耳たぶに当てる



耳のそばで、バネが伸縮する音が聴こえる


「あんま、固くなんないで こっちが汗かくし」



先生も緊張してると思ったら、なんだか可笑しくて

私はふっと笑った




その瞬間―



「いった~いあせる


「そう、じゃ止めるか?」


「い、いいえ 止めませんあせる



「じゃぁ 次、右」


そうして、右耳も同じ様に悲鳴を上げてしまった




かなり痛かった

しっかり握られた拳の中は汗でびっしょり


「ありがとうございました」


手袋を外す手を見つめながらそう言った


「詰まんないね 案外頑丈なんだ

 失神でもするかと思っていたのに」



そう言いながら、私の隣に腰を下ろす



「もう、そろそろ……」


焦って立ち上がろうとした時

不意に片手を握られた



細い指先のくせに思いもよらない力強さで