薄暗い廊下を渡り、階段を下り、降りしきる雨の中、
ユウキは外に繰り出した。
二度と手放さないと誓った愛車
「okamatsu 7号機」にまたがりながら、
国立市や小平市、加えて盗人という強大な敵との
6度にわたる今までの壮絶な戦いに思いをはせていた。
「okamatsu 7号機」の速度が時速10キロを超え、
ついにダンジョン小平の出口に辿りつくかという時、
ユウキの身に痛みが走った。
今までも感じていたのかもしれない、
突如として感じたのかもしれない。
どちらにせよその痛みがついにユウキをとらえたのである。
「さ、寒い・・・」
一こぎ一こぎするごとに、ユウキのHPは削られていった。
まだその時は我が家までなら辿りつけると思っていた・・・
だがダンジョンの出口に辿りついたユウキは愕然とした。
目の前に予期せぬ光景が広がっていた。
ダンジョン小平の出口に白と黒の猫がたむろしていたのである。
よくある光景であるが、その日は普段と違っていた・・・
黒い猫がだるそうに、あぐらをかいて道路に座り、
こちらを睨んできたのである。
「ドゥクシ!!」
ユウキの防御力は3下がった。
そう、「にらみつける」である。
なんとかその猫を撃破し、
再び愛車をこぎ出したが、
その時ユウキは認識した。
自らがこの寒さに耐えられない体になっているということを。
ユウキは模索した。
自らが生きて帰れる手段を。
そこでユウキは、昔とある村人に聞いた伝説を思い出した。
「小平ダンジョンのどこかには、
様々な防具が山のように積まれている、
夢のような秘境がある。」
ユウキは寒さで凍える体に鞭を打ちながら、
ダンジョン小平の中を必死で探しまわった。
時計は午前2時を過ぎ、
あたりは閑散として人一人の気配も感じなくなっていた。
そんな中、ユウキはひとつ、電気がついている部屋を見つける。
急いで向かうとその部屋の中から、人の声がする。
しかし、ユウキは入るのをためらった。
その部屋の前には看板が立っており、
片面には「コスメルーム」、まあこれは良しとしよう。
もう片面に「光化学スモック注意」と書かれていたからである。
なんとか覚悟を決め、扉をあけるとそこには
2,3人の村人が談笑していた。
ユウキは声を振り絞って、防具のありかを尋ねた。
すると村人のなかの一人、がこう答えた。
「この部屋を出て、来た道を少し戻られよ。
そこに『ざいこルーム』という名の部屋がある。
そこに行けば、そなたの望むものが手に入るであろう。」と。
ユウキはその人にお礼を言い、部屋を後にした。
ユウキに助言をくれたその人は、女性であったが
どうやら先ほどの部屋の主であったようだ。
ユウキは言いつけどおり、自らのきた道を戻り、
眼を皿にして暗闇の中を進んでいった。
そしてついに見つけた。
「ざいこルーム」を。
その部屋の中に入ったユウキは驚愕した。
様々な種類の防具たちが、驚くほど乱雑かつ、その部屋いっぱいに
散らばっていたからである。
ユウキはその中から自らに合う防具を探した。
サイズ、色、形、様々なものがあった。
その中でユウキは、
まばゆいばかりの太陽のような光を放つ鎧を発見した。
あらかじめ決まっていたかのようにその鎧を手にしたユウキは、
それを装備し、無事、極寒の中、生きて我が家に辿りついた。
その鎧の前方部、
胸のあたりには黒と青で縁取られた魔石が埋め込んであった。
「N」、「E」、「X」、「T」と・・・・・
「NEXT伝 序章」より抜粋