「6年目の卒業」
ラグビーの試合中に大怪我をしてしまった筆者が、怪我から立ち直る過程の経験で学び得た様々な事。
家族の愛情とその大切さ、友人の大切さと温かく見守りながら支えてくれた事。
本の執筆を提案された先生、病院の先生方・看護士さん達、そして、休学から戻った年齢違いの級友達、学校の先生方など、総ての人達の深い愛情と友情に支えられ、最後の1年間を無事にスタートさせる事ができ、そして過ごす事ができた。
学校の迎え入れ体制も、筆者を迎え入れるために通常上階の教室である3年生を1階に移し、
しかも車椅子の筆者の為に校内にスロープまで設けられていた。
また、上階の教室での授業の時は、力技で男子が車椅子ごと担いで上がってくれた。 と記している。
無事に最後の1年を過し卒業式を迎えた。
式典を終え、卒業生が退場する時の事が綴られているのだが、この数行に親が子を思う気持ちが
凝縮されていて、何度も何度も読み返しては、健康で何不自由なく育った自分であっても、
親の気持ちが解る様になった今だから、苦しい程にあふれる感動で、胸が熱くなった。
そのシーンを本文より引用する。
前略
卒業生退場の指示とともに僕たちは立ち上がった。 一人の男の子がいつのまにか僕の後ろにまわって車椅子に手を掛けていた。
「押していくよ」
無言のままそう合図していた。
卒業生が少しずつ退場し、僕の列も動き出していた。前を見ると、母は立ち上がってクラスのみんなにお礼を言っていた。
母は泣いていた。母の気持ちは痛いほどわかっている。
入院当時から僕のそばを離れず付きっきりだった母の喜びは僕以上だったかもしれない。
母の横を通り過ぎるとき、「いいから座って」と言った。 が、母は立ったまま卒業生全員が退場する
まで座らなかった。
後略
筆者がこの本で伝えたいと考えた本質的な事ではないかもしれないが、ご自身同様、もしくはそれ以上に悩み苦しまれたお母様の気持ちが痛い程解り易く活字になって表現されていて、私自身にもその状況が
容易に想像でき、この本を読んで最も心に残った部位の一部である。
この項 「ぼくに涙はにあわない 著作 千賀康司 」 を、本来は、瀬戸西の今年のチームの
最後の試合日、試合後になるように調整を図ってきたつもりだが、1週間ほどずれ込んでしまった。
ラグビーや家族愛、友人との関係等々様々な人間模様が描かれたとても読み易く理解し易い内容で、
機会があれば是非触れて頂きたい作品である。