「短編小説:真珠の街で変身」

神戸、東灘の急な坂道。

海へと向かって真っ直ぐに伸びるその道は、

彼女が私立の名門女子校に通っていた頃から何一つ変わっていない

​「行ってらっしゃい」

​二人の子供を送り出した後の静まり返ったリビング。

磨き上げられたフローリングには、

かつて大手企業の営業職として、

ヒールを鳴らして街を駆け抜けていた自分はもういなかった。

英文科を卒業し、

言葉を武器に世界と渡り合うことを夢見ていたはずの指先は、

今や洗剤の泡と子供の連絡帳のインクに充てられている。

​「お母さん、英語教えて」

昨夜、上の子が差し出した教科書。

そこに並ぶ一文を読み上げた瞬間、自分の中で眠っていた「音」が跳ねた。

The limits of my language mean the limits of my world.

​(私の言語の限界は、私の世界の限界を意味する)

​専業主婦として過ごした十数年。

それは決して空白ではなかった。

家庭という小さな組織の中で、

言葉にならない家族の思いを汲み取り、

衝突を回避し、最善の妥協点を見出す。

それはまさに、究極の「仲介人」としての訓練期間だったのではないか。

​その日から、彼女は「霧の温室」の扉を開くように、自らの再起動を始めた。

ターゲットは、企業の国際広報。

​かつて営業で培った「相手の懐に入る力」と、

英文科で磨いた「言葉の裏側を読み解く力」。

その二つを掛け合わせれば、日本企業の価値を、

まだ見ぬ海外投資家やユーザーの心へ届ける「翻訳」ができるはずだ。

​深夜、ダイニングの琥珀色の灯りの下で、

彼女はリサーチを重ねる。

最新の広報戦略、海外メディアの動向、

そして自らのキャリアを再定義する言葉。

​「ブランクは、欠落ではない。熟成の期間だった」

​面接当日。

神戸港を見渡すオフィスビルの窓際に立った彼女は、

かつてのように背筋を伸ばした。

窓の外には、霧が晴れ、陽光に煌めく海が広がっている。

​「私がやりたいのは、単なる情報の伝達ではありません。

企業と世界、その間にある見えない境界線を、

言葉という橋で繋ぐことです」

​面接官を見つめる彼女の瞳には、

かつての自分よりもずっと深く、そして鮮やかな色彩が宿っていた。

​坂道を下る足取りは軽い。

昨日までと同じ景色が、

まるで異国の街のように、

新しい可能性を孕んで輝いて見えた。

「​本日の語彙&表現」

​English
​Gap year: ブランク(充電期間)
​Bridge: 橋、橋渡しをする

​Español
​Puente: 橋
​Renacimiento: 再生、再誕生

​Italiano
​Ricominciare: 再び始める
​Luce: 光

「あとがき」

私の性格診断のひとつ「仲介人」をヒントに短編小説系の記事を作成。

外資系から現在までの私の人生の歩みは

「仲介人」らしい足取りそのもので、診断の威力に驚いています。

そしてもし私が京阪神在住の主婦で国際都市、神戸市で再就職するとしたら?

という設定で主人公を「国際広報」を目指すであろうと。

広報の仕事は華やかに見える一方で裏方の泥くさい作業もあります

ブランドのアンバサダー達を影で支えているのも広報スタッフです

さて、「国際広報」とは広報✕英語スキルだけでは不十分。

業界や製品のテクニカル側面や製造過程などの知識。

社内外での交渉や調整も必須です。

現場を知るために営業に同行したり、ユーザーのプロファイリング調査もあります。

神戸市では今後、国際化がさらに進展していくので国際広報のニーズは高まるでしょう。

私も住民としてそういう方面で人材育成に寄与できたらなと。

ということで、また〜

追伸: ラジオはFM局パーソナリティで経験がありますが、もう10数年やってないのでボイストレーニングやらないとです。せっかくの美声(悪声かも)が戻らない?


​#短編小説
#再就職
#国際広報
#キャリア再構築
#神戸
#異邦人館
#霧の温室
#仲介人
#エッセイ
#ライフスタイル