(短編創作)夜の庭園と真実の光(ツインレイ系)
雨の降らない夜、彼女はいつも、植物が生い茂る自宅の庭園で夜空を見上げていた。
どこからともなく聴こえてくる、姿の見えぬ男の声。
甘く、優しく、魂の奥底を撫でるようなその声音に、彼女は毎夜うっとりと酔いしれていた。
現実の夫は、冷淡で計算高い男だった。
彼女の繊細な感情など省みず、すべてを合理的に処理する態度に、彼女は心底ウンザリしていたのだ。
だからこそ、この「声の主」だけが、彼女にとって暗闇の中に咲く唯一の救いだった。
「これは運命なのね。ついに引き寄せた、私の魂の片割れ」
ある夜、闇の中から低く囁く声が届く。
『知っていますよ。あなたの苦しみを。明日の夜、私の元に来ませんか?』
彼女の心は激しく動揺した。
戸惑い、葛藤しながらも、彼女は気づいていた。自分はこの姿なき男に、すでに深く深く心酔しているのだと。
今の生活を捨ててでも、運命の導きに従うべきなのだと。
翌晩、胸の高鳴りを抑えながら、彼女は庭園の奥、密生する茂みへと駆け寄っていった。
「あなた!」
愛しい声の主のもとへ飛び込もうとした、その瞬間。
バッと眩いばかりの強い光が庭園全体を照らし出した。
逃げ場のない白日のもと、茂みの中に潜んでいた男の姿がくっきりと浮かび上がる。
そこに立っていたのは、運命の王子などではなかった。
日頃から彼女をねっとりとした卑しい目で見つめていた、近所の冴えないオヤジだった。
「ひっ!」
彼女は息を呑み、足のすくむ思いでぼうぜんと立ち尽くした。
理想の「魂の声」だと信じ切っていたものの正体は、泥臭い下心を隠した、最悪の現実だったのだ。
茫然自失となる彼女の背後から、静かな足音が近づいてくる。
光を照射したのは、冷淡だと思っていた夫だった。
夫は逃げ惑うオヤジを一瞥もせず、震える彼女の身体を力強く抱きしめた。
「もう大丈夫だ」
夫の冷酷に見えた計算高さは、妻の異常にいち早く気づき、罠を暴いて守るための冷徹な知性だったのだ。
「あなた!」
彼女は夫の胸に顔をうずめ、己の愚かさと、目の前にある本当の愛に涙を流した。
(おわり)
「解説」
甘い言葉や耳触りの良い幻想に心を奪われ、目の前にある不器用な誠実さを見誤ってしまう。
山本周五郎が描いてきた「人間の本質」を現代のスピリチュアルに置き換え、耳触りの良さよりも確かな愛を見抜く大切さを込めて書いてみました。
P.S. 創作の意図はアンチ目線ではなく現実主義からの描写です。現実的に観てツインレイ以外に説明の付かない現象もありうるでしょう。人生色々だし、十人十色だから面白い。だから生きる価値がありまくり。
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