「神話のリアルな女性たちVol.2」
喋りすぎのペナルティで「オウム返し」しかできなくなった女性。
神話のきらびやかなイメージの裏にある、現代の泥沼ドラマ以上のハードな現実。そんな彼女たちのリアルなエピソードを追うシリーズです。
第2回目は、自分の言葉を失ってしまった妖精、エコーのストーリー。
・今回の主人公プロフィール
立場: 森や山に住む妖精(ニンフ)
初期状況: おしゃべりが大好きな人気者
トラブル相手: 最高神の正妻(女神ユゥノー)
・浮気のアリバイ工作への加担
エコーは、非常に話し上手で賑やかな妖精でした。しかしその才能が、最高神ユピテルの浮気騒動に巻き込まれるきっかけとなります。
ユピテルが他の妖精たちと浮気をしている間、正妻である女神ユゥノーが現場に突撃してくるのを防ぐため、エコーは持ち前のおしゃべりでユゥノーを引き止め、時間を稼ぐ役割を担わされました。
巧みな話術で長話を続け、何度もアリバイ工作を成功させます。
・女神の怒りと、理不尽なペナルティ
何度も足止めを食らっていたユゥノーですが、やがてエコーの話が「自分の目をそらすための罠」であることに気づきます。
激怒したユゥノーは、エコーに対して冷酷な呪いをかけました。
それは、彼女の最大の武器である「言葉」を奪うこと。
エコーは今後、自分から新しく言葉を発することができなくなり、他人が言った言葉の「最後の数語」をそのままオウム返しすることしか許されなくなりました。
・片思いの結末と、消え去った姿
自分の意思を伝えられなくなったエコーは、ある日、美少年ナルキッソスに恋をします。
気持ちを伝えたくても、彼が発した言葉をそのまま繰り返すことしかできません。
ナルキッソスが「誰かそこにいるのか?」と言えば、エコーも「そこにいるのか?」と返すことしかできず、会話は成立しませんでした。
不審に思った彼から冷たく拒絶され、深いショックを受けたエコーは、恥ずかしさと悲しさのあまり洞窟の奥へと身を隠します。
食事も喉を通らないまま悲しみに沈んだ結果、彼女の体は衰弱して消え去り、骨は石に変わりました。
現在は、誰かが叫んだ声をそのまま跳ね返す「こだま(エコー)」として、その声だけが残っています。
・関連フレーズ
ラテン語: Vox tantum remanet.
イタリア語: Rimane solo la voce.
英語: Only the voice remains.
和訳: 声だけが残る。
「あとがき」
おしゃべりが得意だったからこそ、他人の都合のいい片棒を担がされ、最終的に自分だけが言葉を失うという展開は、現代の視点で見てもかなりやりきれないものがありますよね。
間違ったことの片棒を担いだ結果、取り返しのつかないペナルティを負うあたり、大昔から人間の営みの本質は不変ですね。
次回も、現代に通じるような、理不尽なドラマになっているので、ぜひお楽しみに!
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