​第1回:19世紀前半(ロマン主義とダンディズムの時代)

​時代背景: 19世紀前半(フランス復古王政期〜七月王政期)
​代表作: オノレ・ド・バルザック『ゴリオ爺さん』(1835年発表)

​テーマ: 階級社会を生き抜くための「武器としてのモード」と青年ウジェーヌの野心

​原作からの引用

​Il se complut dans sa propre personne. À Paris, un habit de cette force est une clef qui ouvre toutes les portes, un passeport de la plus haute distinction.

​「彼は自分の姿に見惚れた。パリにおいて、これほど見事な服はあらゆる扉を開く鍵であり、最上級の品格を証明するパスポートなのだ。」

「​考察」

​衣服による精神の変容と社会的通行証
​自らの姿に見惚れる描写から、衣服が個人の内面に与える心理的影響がより鮮明に伝わります。

衣服は単なる防寒具ではなく、人間の立ち振る舞い(モード)を内側から変える力を持っていました。

・​完璧な仕立てへの執着(ダンディズムの源流)

​「最上級の品格」という言葉が示す通り、当時は派手な装飾ではなく、仕立ての完璧さそのものがステータスでした。

イギリス発祥のダンディズムの美学が、当時のパリの若者のライフスタイルに深く根づいていた証拠です。

​・令和の日本との対比

​効率性や快適さを最優先しがちな現代の衣服選びに対し、「服をまとうことで自らの意識を高め、社会に打って出る」という、モードが持つ本来の緊張感と美学を思い出させてくれます。

​語彙&表現

​se complaire dans 悦に入る
sa propre personne 自分自身
un habit 衣服
cette force これほどの
une clef 鍵
ouvrir 開く
toutes les portes あらゆる扉
un passeport パスポート
la plus haute 最高峰の
la distinction 品格

「あとがき」

衣食住というライフスタイルの3本柱で

もっとも時代の変化に敏感なのが衣、つまりファッションでしょう。

「ファッションを研究すると時代を読み解くことになる」

ということで世界をリードしてきた欧州のモードを時代毎に区切り

文学作品を通して研究するシリーズです。

いつもは普通なのに特別なオケージョンではダンディな祖父

みたいなシーンを子供時代に経験。

むろん常にダンディでも良いのですが

切り替えて別人になるのって悪くないのでは?

もしかしてコスプレの底流にも類似の感覚が潜んでいるのかも。

そう言えばアーチストの卵を発掘活動していた頃、

録音スタジオでボイステイクで南欧の首都にやってきた少女。

完全なゴスロリで決めていて周囲の視線を強烈に集めていました。

当時、首都ですらゴスロリがほぼ実在しなかったのです。

周囲の反応を観て、モードがソーシャルインパクトを与える場面を実感。

最初にミニで歩いた女性もきっと当時同様のソーシャルインパクトだったのだろうなあと。

ということで、しばらくシリーズにお付き合いいただけると幸いです。

では、また〜



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