「一万年前: 令和日本が原始時代に飛ばされる(3)」
(第3章:鉄道とモールス信号)
転送から180年。列島の風景は一変していた。
各地に散らばった集落は、21世紀の『聖書(写本)』を基に都市国家へと成長。
そして今、かつて「関東平野」と呼ばれた大荒野の真ん中で、180年ぶりの咆哮が響き渡ろうとしていた。
「漆黒の咆哮」
ズ、ズ、ズ、と大地を震わせる駆動音。
「火を入れろ! 圧力を上げろ!」
煤まみれの作業着を着た若い技術者、レンが叫ぶ。
彼が見上げる先にあるのは、いびつなリベット留めの鉄板と、巨大なボイラー。
21世紀のデジタルアーカイブに遺されていた図面を、
5世代にわたる試行錯誤の末に鋳鉄で再現した、
「新・蒸気機関車一号」だった。
El hierro da forma al futuro.(鉄が未来を形作る。)
かつて新幹線が時速300kmで駆け抜けた場所には、
原始の森を切り拓いて敷設された粗末な鉄路が延びている。
近代的な工作機械がないため、ピストンの気密性は甘く、蒸気は漏れ、お世辞にも美しいとは言えない。
しかし、石炭の煙を吐き出しながら車輪がゆっくりと回転を始めた瞬間、
集まった数万の群衆から地鳴りのような歓声が上がった。
「動いた。本当に、書物に書かれていた通りに動いたぞ!」
馬や徒歩しか知らなかった新人類たちが、時速30kmの「鋼鉄の怪物」の誕生に涙を流していた。
文明の「足」が、180年ぶりに復活した瞬間だった。
「ト、ツ、ト〜 150年ぶりの同期」
同じ頃、都市の「通信塔」と呼ばれる木造の高台では、一人の女性通信士がヘッドホンを耳に押し当てていた。
ヘッドホンといっても、銅線を削り出し、磁石を組み合わせて手作りした不格好な骨董品だ。
静寂。ただ、プツプツという静電気のノイズだけが流れる。
かつて先祖たちが使っていた「電波」や「光回線」の原理は写本で知っていたが、
それを再現する半導体は地球上に存在しない。
彼らが選んだのは、最も原始的で、最も堅牢な、銅線による有線通信――モールス符号だった。
ト、ツ、ト、ト〜
Ascoltiamo la voce della distanza.
(私たちは遠くの声を聴いている。)
ノイズの向こうから、冷たい金属音が響いた。
40年目にすべてのデジタル端末が死に絶え、人類が完全にバラバラになって以来、約150年。
関東から数百キロ離れた「東海都市国家」からの信号だった。
コチラ、トウカイ。テツロウ、ツナがッタカ
通信士の指が震える。
彼女は電鍵を激しく叩き返した。
コチラ、カントウ。ツナガッタ。テツロウ、イマ、ウゴイタ
日本列島が再び「情報」で一つに同期した夜だった。
「文明の再点火」
レンは、動き出した機関車の運転席から、どこまでも続く鉄路を見つめていた。
彼らの手にある聖書(写本)の記述に従えば、これはまだ人類の歴史の、ほんの序章に過ぎない。
The engine of progress has started.
(進歩のエンジンが始動した。)
先祖たちが遺した膨大な知識という名の設計図。
それを物質としてこの世界に具現化していく戦いが、ようやく始まったのだ。
不格好な鉄と、一本の銅線。
それが、失われた21世紀へと人類を引っ張り上げるための、新しい錨(いかり)だった。
「解説」
19世紀の肉体に、21世紀の頭脳
この時代の人間は、中学生でも「電磁誘導の法則」や「熱力学の法則」を数式で知っています。
しかし、彼らが実際に扱えるのは「ハンマーと高炉」だけです。
「答え(理論)」を知っているのに、それをカタチにする「手(技術力)」がない。
このもどかしさが、彼らを猛烈な速度で突き動かします。
「神話」から「科学」への回帰
180年が経ち、21世紀の世界は完全に「神話」から
「再現可能な科学」へと展開されました。
先祖が遺した写本は、崇める対象ではなく、実用するための「設計図」になったのです。
しかし、その代償として、
かつて1万年前の豊かな自然が誇っていた静寂は、
再び石炭の煙と、鉄を叩く騒音によって塗り替えられ始めます。
語彙&表現
英語
engine エンジン
progress 進歩
started 始動した
スペイン語
el hierro 鉄
da forma 形作る
el futuro 未来
イタリア語
ascoltiamo 私たちは聴く
la voce 声
la distanza 遠く
「あとがき」
いくら知識があるとはいえ、わずか180年で列車が走るのは凄すぎます。
1万年前の日本でも復活に向けて進めるのですから令和時代では何が起きても復活は可能でしょう。
そもそも地方創生が進むことで大災害後はさらに発展できるというAIの最新予測もあります。
これは国民の手取りを増やすことを軸に現実的な政策を実行した場合、
そのような希望のある未来予測をAIが初めて叩き出した結果です。
東京一極集中を解消できない&手取りが増えない方向性では、残念ながら真逆の結果となります。
閑話休題。
薔薇園の開花時期も終焉に近づいているようです。
最高気温が30度声で朝晩が15度近く下がるという高原気候。
これが本気の夏ともなると35度超えです。
私は35度を超えると初めてアイスを食すことにしています。
北海道では真冬にアイスも有りだそうですが、ブルブルです。
ということで、また〜
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