ダーツ小説 DF前の彼女 | WDC ダーツですょ(・∀・)

ダーツ小説 DF前の彼女

「よし、こんなもんか」
ダーツバースナイパーは、朝8時にて閉店。ダーツァーには優しい、毎日ハッピーアワーにドリンク・フードも格安で提供してくれる。
本日のレイナの会計は、1500円。飲み物二杯に、フード一品。
チェーン店のダーツバーなら、この金額にチャージもプラスされ、ダーツをとるか交通費をとるかで悩まされる程なのだが。
スナイパーは、そういったことも不安にさせない良心的なお店であった。
レイナは今年度DF決勝シングルス戦にて、優勝を収めた。
本来なら、共に練習してきたカガリとダブルスにて優勝したかったのだが。
カガリは、練習しすぎによりひどい腱鞘炎にかかってしまい、今年度のDFは見送らざるを得なかったのだ。
「ダーツを投げられない腕になってもいいのか」と医者に言われたレイナの相棒カガリ。さすがに、一生ダーツを投げられなくなってしまうのはごめんだと思い、DF優勝目前と騒がれていたが、涙を呑んで事態した。

そのため、レイナはシングルスでカガリの分も頑張ろうと、ここ1週間寝る時間を削って8時間程練習している。
もう一度、自分の体に基礎を叩き込もうとしていたのだ。
カウントアップの最低ラインを700点と決め、1投ずつ集中して投げる。
最低ラインを1点でも下回った場合、ローテーションを空投げで練習。
ゲームのローテンションなら、定められた枠のどこに入っても構わないのだが、レイナは自分自身に課題を決めていた。
最初に狙うのは、広いシングル枠から。1を始めとして、順に20まで投げていく。
一度でもダブル・トリプル・狭いシングル枠にずれてしまった場合、最初からやり直し。
これはダーツの頂点に立つフィル・テイラーの練習法でもあると聞いて、ミーハーでもあるレイナは毎日かかさずこの練習を行っていた。
「あー、腕疲れた!ストレッチして、明日の練習に疲れを残さないようにしないと!店長、今日もありがとう!」
「いえいえ、こちらこそ。基本は大事だからね」
「うーん。精神と時の部屋があったら、そこでずっと練習したいんだけどねぇ」
「うん?なんだい、それは」
「あ、ドラゴンボール・・・店長、知らないか」
「あー、僕はアニメとかに疎いからね。へぇ、ドラゴンボールっていうアニメがあるのか!」
「そうなんですよ。アニメの中で出てくる精神と時の部屋は、一日で一年分の修行ができるという素晴らしい部屋なんですよ」
レイナは軽く腕をストレッチして、ダーツをジーンズに引っ掛けてあるダーツケースにしまった。
会計を済ませ、また明日!とレイナは冗談めかして、スナイパーの店長に挨拶をして、家路へ向かう。
「いやぁ、今日もいい天気だなぁ。サングラス必要だわ」
レイナは携帯で湘南乃風のサボテンを聞きながら、眠い目をこすり、車に乗り込んだ。
そして、車の中で12時までのしばしの仮眠を取る。
レイナの仕事は、昼1時から始まるため、家に帰って色々寝支度をするよりも、睡眠時間が取りやすいのだ。
普通の女の子は、車で寝泊りなどもしないのだが・・・好きなことのためなら、性別を超え、恥じも捨てる。
これが、レイナの信条でもあった。

「よし、12時!ぱぱっとシャワー浴びて、仕事するぞ!」
レイナはきっかり12時に目を覚まし、ここから10分程車を走らせたマンションへと向かった。
暑くなり始めた5月の終わり。車の中で冷房もかけずに寝ていたため、体中汗でびっしょりとなってしまっていた。
車内温度も27度と高い。
「困ったな、今日は天気がよすぎる」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら、三階にある自分の部屋へ階段を一段飛ばしで上がっていく。
「ん?でっかい荷物・・・引越しかぁ」
レイナは自分の部屋の鍵を開けながら、隣の306号室目の前に置いてあるダンボールを横目で見ながら、扉を開けた。
「こんにちわ!」
扉を開け、部屋の中に入ろうとした時、声が聞こえた。
どうやら、引越ししてきた隣人の声のようだった。
レイナは面倒くさがりながらも、顔を出して挨拶をしようとした。
「ども、今日から隣に住みます、大倉です。よろしくお願いします!」
「・・・うそ」
隣人は爽やかな笑顔で挨拶をした。レイナは、こんにちわのこの言葉さえ出てこなかった。
レイナの目の前にいたのは、この一年間何度も繰り返してDVDを見ては、投げ方の研究をしていたライブプロのパオパオだったのだ。
元々メンズエッグのモデルをしており、その後メンズナックルやホスト系の雑誌で活躍しながらも、ダーツと出会い惹かれた男・・・
彼のDVDは、ホスト好きやジャニーズ好きの女の子には、よく売れていた。ダーツを知らなくても、彼の姿を見たいがために、DVDを買ってしまうという子もいた。
レイナも彼女たちと同じだった。そして、この人と同じ舞台に立ちたい!いつかこの人を超える人になりたい!
憧れて、目指して、懸命にダーツを練習してきたレイナの目の前に、ダーツ熱をつけた張本人がいる。
この事実、興奮しないわけがなかった。
「パオパオさんですよね!やだ、嘘!凄い!こんな偶然ってあるんですね!私、パオパオさんを超えるためにダーツ矢ってるんです!だから、待ってて下さい!いつか必ず、あなたを超えるプレーヤーになりますから!」
「・・・え?」
レイナは、ちゃんとした挨拶をすることなく、言いたいことだけを言って、自分の部屋の中に逃げ込んだ。
「俺のファンが隣かぁ・・・凄い偶然だな」
一方、パオパオというカードネームで活躍している大倉は。
初めて面と向かって、自分を超えると言われたなぁ、しかも女の子に。
そんなことを思いながらも、口元は微笑んでいた。
「昔の俺に似てるな」
大倉はダーツに知り合った頃のことを思い出しながら、荷物の整理を続けた。

レイナは早速、ダーツのSNSの日記欄に書き込んだ。
『今日、パオパオさんが隣に引っ越してきました!ヤバイです、カッコ良すぎです、鼻血ものです!抱かれたい!』
と、意味不明な文章を書き込んで、すぐにシャワーを浴び始めた。
朝から私はついてる!隣に聞こえる程大きな声で叫び、歌をうたいながらシャワーを浴びるレイナ。
その声はもちろん、荷物整理をしている大倉に聞こえていた。
「元気な子だなぁ」
大倉は恥ずかしそうに笑いながら、レイナの口ずさむ歌を聴いていた。
「これから、楽しい生活が始まりそうだな」
大倉は少し先の未来を想像しながら、左手は自然と空投げをしていた。
まずは自分を超えるといったレイナの実力を見てみたい。大倉の瞳には光が宿っていた。
これから現れる強きルーキーを想像しては、荷物の整理を中断させ、早速取り付けたダーツボードの前に立った。
「ルーキーには負けないぞ」
と独り言を呟きながら。

一方レイナは。
「ヤバイ!幸せすぎる!パオパオさん、マジカッコイイ!」
とうるさい声ではしゃぎながら、シャワーを浴びていた。


レイナが実力をつけ、大倉に追いつくのはもう少し先のお話。


DFは、ダーツファイトの略。
各店舗の予選を勝ち抜いて、決勝を決める試合。
このストーリーでは、WDCがダーツの世界大会とすると、
JDCが日本トップを決めるもの。
JDCに参加できるのは、DFベスト4に選ばれた者のみとなる。


ダーツをやっている人なら、太郎さんや星野さんが隣に引っ越してきたら、興奮するだろうな…と考えながら書いたものですニコニコキラキラ
ダーツを知らないと分からないかも…(^^;;