いけない恋 君にサヨナラ2
「俺は、あなたを好きです」
好きって、何?
どこまで、好きなの?
ねぇ、私を、本当に好き?
愛してるの?
嘘、言わないで。
「ママ、一人暮らしはど? いい人みつけた?」
「うーん、一人気ままに暮らしてるわ。リズも、いるし」
「そーじゃなくて!」
22歳の愛娘は、妊娠した。
そう。聖司くんの、子どもだ。
若いっていいわね。
あなた、幸せね。
「もう、ママもおかしいし、聖司もなんかおかしいのよ。仕事でうまくいってないみたいで、顔がいつも泣きそうなの」
「・・・そう。お母さんが恋しいんじゃないの」
「違うわよ。聖司のお母さん言ってたけど、マザコンじゃないから、仕事がうまくいってないのかもって」
聖司くんの、泣きそうな顔、すぐに思い浮かぶ。
だって、私と一緒の時だって、そうだったもの。
いつかは、消えてしまうよね?
聖司くんは、言葉にならない声で、そう尋ねていた。
私だって、泣きたい。
でも、君は、娘の大切な人だから。
手出しちゃ、いけないんだよ。
「由利奈さん!今度、観劇に行きませんか?」
「原稿書くわ」
「たまには、息抜きしましょうよ!」
井原くんは、付き合ってみると、犬だ。
私が、どんなに酷いことしても。
いっつも、笑顔で待ってる。
どうしてそんなに、優しいの?
「それに、書けなくなった時にこういうの見に行くと、書く意欲わいてくるんですよ!」
にかぁーっていう笑みで、私を見た。
私は、その笑みに勝ったことは、一度もない。
「仕方ないなぁ。原稿おわらなかったの、担当のせいにしちゃお」
「だ、だめですよ!原稿も、ちゃんと仕上げて下さいね!」
生意気。
だけど、そういう所もなんだか可愛い。
井原くん、本当に私なんかと付き合っていて、いいの?
そう、問いたくなってしまうのは。
今でも、君を想っているから。
忘れたくても、忘れられない。
人って、そういうもんだよ。
「いやぁ、良かったですね!どうですか、刺激されましたか?」
観劇と言っても、私の書いている小説とはかけ離れているもの。
少年たちの、夏の思い出。
そういったところ。
だけど、笑った。たくさん、泣いた。
演技してる人が凄いって、初めて思えた。
「私、彼らを気に入ったな。ほんとに、凄い演技だったから」
「そうですよね、最近噂なんですよ!この、RAY UNIって。笑いあり、涙ありの、テレビでも話題となった舞台なんです。また、見に行きましょうよ!」
「・・・そうね」
RAY UNI
不思議な、名前。
そして、気づいてしまった。
YURINA・・・
この劇団の、代表の人は、誰?
ねぇ、君なの?
聖司くん――――――
「ちょっと、楽屋の方へ行ってくるわ」
「分かりました。俺、先に出てますよ」
心臓が、高鳴る。
劇団スタッフ、ちょっと偉そうな人、見つけた。
「すいません、このRAY UNIって本当は、YURINAですよね・・・?」
「そうだよ、聖司の最愛の人の名前だって聞いたけど・・・?」
最愛の人の名前?
聖司くん、どうして?
君は、どうしてそんなことするの?
「もしかして、由利奈さん?」
涙が溢れてくる。
止められない。
偉そうな人が、私の腕を引っ張って行った。
「由利奈さんが来たら、伝えて欲しいって言われてるんだ。ずっと、あの図書館で待ってるよって」
涙は止まらない。
どうして、そんなことするの?
だって、夏奈は?
ねぇ、どうして、聖司くん!
「あ、由利奈さん。ど、どこ行くんですか!」
「ご、ごめん。今日は一人で帰って、大切な用を思い出したの!」
タクシーを呼ぶ。
もう、午後10時だ。
図書館がやっているわけ、ない。
だって、午後7時にもう閉まってしまうもの。
だけど、行かなきゃいけない気がしたの。
今すぐ、会いに行かなきゃ・・・・
そんな気がしたのよ、聖司くん。
「やっと、会えた」
「どうしているのよ」
いるわけないと、思ってた。
私は、結局一人なんだって・・・
それなのに、どうして?
「今日、あなたと撮った最初で最後の写真が、何故か僕のスーツのポケットに入ってたんだ。夏奈に悪くて、しまっていたのに」
「それで」
「なんだか、今日はあなたに会える気がして。僕の創り上げた劇団も、起動に乗ったし。もしかしたら、劇を見に来てくれてて、それでスタッフの伝言聞いて、ここに来てくれるんじゃないかって。神様っているんだね。やっぱり、会いに来てくれた」
ティアーロードが、見える。
やっと、触れられる。
やっと、君を抱ける。
「会いたかった」
いけない。
こんなこと、いけない。
なのに、感情が止まらない。
飛び出しちゃ、いけなかったんだ。
だって、君は、娘の夫・・・
「愛してるよ」
君の声が、優しい。
私を、抱しめる腕。
私を、奪うその唇。
私を、愛する、君の強い眼差し・・・
全てが、愛おしいよ。
「もう、あなたに会えないかと思った」
「泣かないで、聖司くん」
「だけど、会えた。僕は、それだけで・・・幸せです」
でも、君は。
娘の夫。
子どもも、産まれる。
それなのに、酷い母親ね。娘から夫を奪うだなんて。
「いいんです、あなたとなら、地獄までも行ける」
一度、手放したのに。
君は私を、追いかける。
娘のものだから。
私は、手を出しちゃいけなかったのに。
君に捕まってしまったら、もう帰れない。
私の帰る場所は、君の温もりの中。