闇恋小説◇絆◇
「あたしのこと好き?」
彼女は言った。僕の腕の中で、眠りに落ちる前に。
言葉で返すことなく、いつものように唇を重ねた。
何度も、舌を絡み合わせ、お互いの唇を食べ合うように交わらせる。
「あたしを、忘れないでね」
彼女はそう言ってほほ笑んだ。僕の瞳を真っ直ぐに見据えて、いつもと同じように元気の出る笑顔をくれた。
それが、僕にとって最高の贈り物だった。
「母さん」
「はい、お茶」
「母さん」
「はいはい、抹茶カステラも用意しますよ」
「母さん」
「あぁ、天気ね。今日は曇りみたいよ、雨の心配はないみたい」
この二人の会話には、毎日のように驚かされる。
父さんは‘母さん‘しか言ってないのに、母さんはその後に続く言葉を聞こえているかのように次々と行動していく。
僕には理解出来ない光景が、毎日のように繰り返される。
たまにイラつく。父さんは、‘母さん‘以外の言葉をしゃべれないのか、茶くらい自分で入れろ。そう思うこともある。
でも、知ってる。二人の愛が深いということ。
夜中まで宿題をしていた時、リビングで声が聞こえてきたことがあった。
それは、夜の営みの声ではない。囁くようにしゃべっていたのを、覚えている。
「お前は本当に、いい母親であって、いい妻だ。俺は、本当に幸せだよ」
「清一さんったら、またその話ですか」
「いや・・・この頃よく考えるんだ。晃が立派に結婚したのも、修一が大学院を卒業出来たのも、お前の支えがあってこそなんだ、と」
父さんは愛用のウイスキーを片手に、母さんの肩を抱いていた。
その姿をこっそりと見ていた僕。その光景だけでも、僕にとっては恥ずかしく感じた。
そして、嬉しくもあった。
両親は、何年経っても愛し合っているのだと。夫婦の絆で結ばれた二人は、本当に幸せそうに見えた。
だからこそ、僕もそんな夫婦になりたかったんだ・・・君と。
「被告人は、妻を殺害したことを認めますか」
僕は、永遠に君と一緒にいたかった。
「はい。永遠の絆を手に入れるためです」
「だから、妻の死体と三年も一緒に過ごしたと言うのですか」
君を誰にも渡したくなかった。どんな姿であろうとも、君とずっと一緒にいたかった。
「そうです。妻を愛していました」
愛していたからこそ、君の骨の髄まで全てを、僕のものにしたかった。
「妻は、笑ってくれました。殺されてもいいと、僕になら殺されても幸せだと、妻は笑顔で言ってくれました」
君も望んだことなのに、何故僕が裁かれる状況に置かれているのか分からなかった。
合意の上で、君は先だったのに。
どうして僕は、犯罪者と呼ばれなければならないのだろうか。
「では、奥さんはあなたに殺されることを望んでいたということですか」
「はい、そうです。なんなら、催眠療法でもやって僕の過去を探ればいい。それを行ったとしても、彼女が殺されることを望んだ事実は変わらない」
それに、君は死んでない。まだ、僕と共に生きている。
まわりはおかしいよね。愛する者の望みをかなえただけなのに、裁かれなければならないのだろう?
僕には理解出来ない。
ただ僕は、昔見た両親のように、永遠の絆を手に入れたかっただけなのに・・・
彼女は言った。僕の腕の中で、眠りに落ちる前に。
言葉で返すことなく、いつものように唇を重ねた。
何度も、舌を絡み合わせ、お互いの唇を食べ合うように交わらせる。
「あたしを、忘れないでね」
彼女はそう言ってほほ笑んだ。僕の瞳を真っ直ぐに見据えて、いつもと同じように元気の出る笑顔をくれた。
それが、僕にとって最高の贈り物だった。
「母さん」
「はい、お茶」
「母さん」
「はいはい、抹茶カステラも用意しますよ」
「母さん」
「あぁ、天気ね。今日は曇りみたいよ、雨の心配はないみたい」
この二人の会話には、毎日のように驚かされる。
父さんは‘母さん‘しか言ってないのに、母さんはその後に続く言葉を聞こえているかのように次々と行動していく。
僕には理解出来ない光景が、毎日のように繰り返される。
たまにイラつく。父さんは、‘母さん‘以外の言葉をしゃべれないのか、茶くらい自分で入れろ。そう思うこともある。
でも、知ってる。二人の愛が深いということ。
夜中まで宿題をしていた時、リビングで声が聞こえてきたことがあった。
それは、夜の営みの声ではない。囁くようにしゃべっていたのを、覚えている。
「お前は本当に、いい母親であって、いい妻だ。俺は、本当に幸せだよ」
「清一さんったら、またその話ですか」
「いや・・・この頃よく考えるんだ。晃が立派に結婚したのも、修一が大学院を卒業出来たのも、お前の支えがあってこそなんだ、と」
父さんは愛用のウイスキーを片手に、母さんの肩を抱いていた。
その姿をこっそりと見ていた僕。その光景だけでも、僕にとっては恥ずかしく感じた。
そして、嬉しくもあった。
両親は、何年経っても愛し合っているのだと。夫婦の絆で結ばれた二人は、本当に幸せそうに見えた。
だからこそ、僕もそんな夫婦になりたかったんだ・・・君と。
「被告人は、妻を殺害したことを認めますか」
僕は、永遠に君と一緒にいたかった。
「はい。永遠の絆を手に入れるためです」
「だから、妻の死体と三年も一緒に過ごしたと言うのですか」
君を誰にも渡したくなかった。どんな姿であろうとも、君とずっと一緒にいたかった。
「そうです。妻を愛していました」
愛していたからこそ、君の骨の髄まで全てを、僕のものにしたかった。
「妻は、笑ってくれました。殺されてもいいと、僕になら殺されても幸せだと、妻は笑顔で言ってくれました」
君も望んだことなのに、何故僕が裁かれる状況に置かれているのか分からなかった。
合意の上で、君は先だったのに。
どうして僕は、犯罪者と呼ばれなければならないのだろうか。
「では、奥さんはあなたに殺されることを望んでいたということですか」
「はい、そうです。なんなら、催眠療法でもやって僕の過去を探ればいい。それを行ったとしても、彼女が殺されることを望んだ事実は変わらない」
それに、君は死んでない。まだ、僕と共に生きている。
まわりはおかしいよね。愛する者の望みをかなえただけなのに、裁かれなければならないのだろう?
僕には理解出来ない。
ただ僕は、昔見た両親のように、永遠の絆を手に入れたかっただけなのに・・・