俺の田舎は
東京から新幹線で三時間
さらにバスを乗り継いで四時間
都合七時間かかる山奥の過疎地
人口四千人の宍粟市というところ
高齢化に過疎という
まさに忘れられつつある土地


そこに
八十を超えた両親が暮らしているんだけど
母親が呆けまして
痴呆症というやつ
昔教員をやっててしっかりした母親だったから
まさか痴呆症になるとは思わなかった
まだ父親が気はしっかりしているからマシだけど
オヤジも足が悪く体力的に動けない
近場の親戚の力を借りて
ようやく暮らしてる
いきなり自分の身にもいままで他人事だった事柄が降りかかってきました


男というものはマザコンな生き物
まして気丈で賢い母親
その母親がボケるということが納得できなかった
事実を把握するのに時間がかかった
父親は昔風で口がキツい
医者は怒られると感じると痴呆症が進むから
なるべく優しく温和に接してあげなさいとのこと
自分が見本を示しつつ
父親に指導
しかし
まだ慣れないうちは自分が呆けつつある母親の言葉を真に受け
ついついカッカしてしまった
いけないと思いつつ


しっかり者で優しい母
子どもの頃のことをあれこれ思い出す
厳しく厳格な父親だったから余計に自分は母親っこだったきがする
叱られたとき庇ってくれたこと
こっそり作ってくれたオニギリとか
その母がなにも解らなくなっていく
そのうち自分のことも解らなくなるだろう


唯一
自分の歌にだけ反応してくれる
自分の歌ったCDをかけるとおとなしく楽しそうに聞いてくれる
歌を歌っておいてよかったなあ
遠く離れても