大相撲で、またも「今さら」な問題が浮上している。





立ち合いの問題。






本来は武道なので、細かいルールがどうのこうのと言うより、
武士道精神に乗っ取り、
「武道に身を置く者は正々堂々と…」
という、言わば「性善説」に由来している事もあり、
「互いに呼吸が合えば」
という、現代人には到底分からない理屈で成り立っているのが現状。




だが、これでは基本的に、
番付上位の力士が有利になっているのが実態なのである。





よく相撲を見ていると分かるが、
先に手を着いて待っているのは下位の力士で、
後からゆったりと手を着いて(かどうか微妙な感じで)
立っているのは、圧倒的に上位の力士が多い。




ここでは、いわゆる「呼吸」とか「間合い」など、およそ一般人には分からない要素は除いて、
運動学的な観点のみで解説したい。





専門的に言うと、「伸張反射」とか「エキセントリック筋活動」とか言えるのだが、
簡単に言うと「反動」を使った方が力は出やすい。




ジャンプする時をイメージしてもらえば分かりやすいが、
膝を曲げてから下で制止し、そこからジャンプするのと、
勢いよく沈み込んで、間髪入れずに一気にジャンプするのでは、
明らかに後者の方が記録は良い。



体力測定の、垂直とびをイメージしてもらえば分かりやすい。




実は、これは相撲の立ち合いと同じ理屈なのである。






つまり、先に手を着いて、待っている力士は不利で、
(制止状態から立ち上がる)
後から沈んで、手を着いたかどうか分からないうちに、すぐさま立ち上がる(反動が使える)のでは、
運動学的には後者が有利なのである。






「間合いを外す」というのは、
例えば相手が手を着く寸前、コンマ一秒の隙を着いて立ち上がると、
相手は全く力が出せない。




つまり、最も力が出せる直前は、
意外に最も無防備な瞬間なのである。






最初に「武士道精神」なんてカッコイい言葉を使ったが、
実は昔は審判も行司もいない場面がほとんどなわけで、
こういう「タイミングの外し合い」で勝負が決まった事も多かったはずだ。






本当は、両者が手を着いて制止し、
「のこった!」の行司の合図でヨーイドンするのが最も公平であるが、
これでは体の小さい者が大きい者に勝つ確率は、かなり小さくなる。



つまり、現状のルールのままで良いのだが、
少なくとも「手を着く」という最低限の事が守られないと、
舞の海や維新力のような相撲が見られない。



彼らは、その手を着くタイミングのコンマ一秒前や後を狙って立ち上がり、
相手の力を少なくして、勝機を見いだしたのである。





これが、手を着くという最低限のルールを曖昧にすると、
地上5センチか10センチか、後から手を下げる力士にタイミングを自在にする権利を委ねる事になり、
ましてや番付の位置で暗黙に、先に手を着く、後から手を下ろす、
などがあるなら、体格に劣る者にはかなり厳しい戦いになる。







だから、後先は別にして両手を着く、というルールを厳格にするか、
両者とも両手を着いて制止状態からヨーイドンで立ち上がるか…





しか、現代のスポーツ化の状態では選択肢が無いだろう。







「これは武道だ!スポーツじゃない!」


というなら、そもそも、入場料取って見せ物にしている時点で、
武道?というものに疑問符がついているのだから。