最近、顧客とサービス提供側の関係について書いたが、
追加で書こうと思っていた矢先、おりしも宋文洲氏(ソフトブレーンマネージメント・アドバイザー)のコラムが日経ビジネスのサイトに出ていたので、ちょっと虎の威を借る狐、で拝借。


時間がないので、私のコメントは後で書くことにして、
とりあえず引用だけ載せておきます。(2007.0405.12時半)



嫌な顧客と嫌な人間 (宋文洲の傍目八目):NBonline(日経ビジネス オンライン)


僕のある嫌な顧客
 以前、著名企業のX社に営業に行った時のことです。現場サイドの方々がソフトブレーンの製品を使用したいと言っているのに、最終責任者で執行役のA氏がなかなかOKを出してくれませんでした。しかし、ある日、彼からお酒を誘われました。

 酒席でA氏は、「自分がいかに本社のトップに好かれているか」「今の立場をどのようにして築き上げたか」を自慢した後、いきなり僕にこう切り出しました。「宋さん、おたくの製品を買ってあげてもいいよ。ただし、定価の2割なら」と。

 2割引ではなく2割です。つまり8割引です。こんな非常識な値段を言われた僕は絶句していると、A氏はお酒を足しながら言いました。「当社に使われること自体は大変な名誉で大いに宣伝になる。ほかで儲ければいいじゃないか」。

 「いくらなんでも2割というのは…」と僕は必死に訴えましたが、A氏は聞く耳を持たず、そのうえ横柄な態度を崩しませんでした。僕は屈辱をこらえながら「検討させてもらいます」と言って、その場を後にしました。

 実は、A氏と話した時点では、ソフトブレーンの製品は既に多くの著名企業に導入していただいていました。ですから、あえて知名度向上や宣伝のために売らなくてはならない状況ではありませんでした。営業をかけたのは、X社の営業現場のカイゼン活動を支援し、現場の負担を軽くするためでした。

 悔しさのあまり、泣きそうになりながら、僕は帰りのタクシーからX社の現場担当の方に電話しました。「○○さん。売るのを辞退してもよろしいでしょうか」。

 その1年後、A氏が突然会社を辞めたとの噂を聞きました。X社の人に理由を聞いてみると、なんと彼は女性の部下にセクハラを働いたため、問題がマスコミに漏れる前に辞めさせられたそうです。

 公式発表ではないので確認できませんが、恐らくその通りだと思います。A氏は善悪判断ではなく、会社の看板と肩書きの力に頼って他人との関係を扱うタイプです。女性の部下に対して同じ態度を取っても、少しもおかしくないと思ったからです。


その後、A氏から僕のところにメールが送られてきました。彼は、再就職できていない状態でした。僕は、慰めの言葉を綴って返しましたが、それ以上に彼のために何かをしようとする気持ちは、全く持ちませんでした。




顧客至上主義の本質は利益至上主義

 「客だから…」という理由で、取引相手の人格を無視したり、理不尽な要求を出したりする人がいます。こういう人ほど、目先の利益に目がくらんで、長期的な利益を取りこぼしてしまうのです。目先の利益を重視する態度は、「俺は客だから」「買ってやるから」「儲けさせているから」という形になって表れます。

 広告会社に勤める友人がこの3月から長期休暇を取りました。努力家の彼には珍しいと思って奥さんに訳を聞いたら、何と営業先のいじめに耐えられないからだそうです。営業先は、著名企業のY社の広報部です。

 友人の広告会社とY社の広報部の担当者は長期的な取引関係を築いてきましたが、友人の電話を突然切ったり、発注内容よりはるかに多い仕事を後から押し込んだり、時にはお手伝いさんのようにその担当者の私的な用事に使われることもよくあったそうです。友人の前々任者が耐え切れなくて転職し、前任者はうつ病になりました。

 この状況を知りながら、友人の上司は何もしません。利益のために著名企業からの発注を失いたくないからです。しかし、社員の健康を犠牲にして得る利益とは、本当にその会社の利益なのでしょうか。

 Y社は誰でもよく知るイメージのよい企業です。恐らく広報部門は、マスコミと自分の顧客に対して相当丁寧できめの細かい対応をしていると思います。しかし、自分が顧客になったが途端、業者を人間扱いしないようなアンフェアな態度を取っているのです。損得勘定で対応を切り替える、モラルの歪んだ利益至上主義がY社には潜んでいるのです。



顧客である前に人間である


 売買する当事者は対等な関係です。改めて言うまでもないですが、お金を払う側が上位の立場で、商品を納める側が下位にあるということではありません。商品を買うことで得る便益を得られるから対価を支払うのであって、お布施を渡すわけではないのです。

 社会人なら当然、理解していてしかるべき基本的な原則を忘れてしまう人とは、基本的に能力ではなく肩書きや地位だけで仕事をしている人です。何の権威も持ち合わせない人が、たまたま間違って権力を持ってしまったために、不幸が引き起こされてしまうのです。よく地位や肩書きが人間をつくると言いますが、他人の気持ちの分からない人は地位や肩書きが立派になればなるほど、過ちを犯してしまいがちです。

 もうすぐ多くの職場で新入社員を迎えます。会社として、部署として、様々な教育を新入社員に施すことでしょう。仕事の仕組みや業務を効率的にこなすノウハウを教えることは大事です。しかし、仕事うんぬんの前に、ありきたりですが、人間としてあるべき姿について改めて教えていきたいものです。日本に限らず、諸外国で企業の不祥事が増えているのは、収益向上の技能ばかりを優先し、人間教育がなおざりにされているからだと思います。